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Michael Borremans : as sweet as it get was

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最近気づいたのですが、自分はアートコンプレックスでないかと。作家や芸術家にはなろうとしてもなれないという、あくまで鑑賞者/消費者の立場。それを自覚してから、より純粋に音楽や芸術全般を楽しめるようになったのは良きことだと思います。

 

 さて、今回取り上げるミヒャエルボレマンスは、現代ベルギーの画家です。出会いは3、4年前の「huge」という雑誌。2年ほど前に原美術館で個展があり、一人で見に行きました。油絵のみならず映像作品もあり、とても興味深く鑑賞しました。

そのとき原美術館に初めて行ったのですが、閑静な場所に佇む美術館がボレマンスの絵にとても馴染んていて、大きい美術館には無い、ゆっくりとした時間の流れの中で鑑賞できたのは良かったと思います。

 彼の作品は一貫してモノクロームな静けさがあり、絵は写実的でマネを想起させるような油絵ですが、シュルレアリスムな面もあります。その写実性にイマジナリーなものが重なりあうことで、複雑な思考のレイヤーを感じさせます。

 

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 ボレマンス本人の言葉を引いてみます。

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ただ、解説されていないからこそ、作品がいきいきとして見える、ということもあると思います。本来、絵とはものごとをよりよく理解するために存在するものでしたが、すべてが説明のついてしまうイメージは単なる挿絵であり、面白味がありません。風景や人物の再現、といった役割を写真や映像に譲ったいま、ペインティングは自由になれたと考えています。

 

 私は描く人物のパーソナリティには関心がないのです。モデルについては作品に合う特徴を持った人を選ぶようにしていますが、人物が特定されるのはあまり好ましくありません。モデルをお願いしているのはほとんどが知り合いではありますが、私でもあり、あなたでもあるような、普遍的な人間を描きたいと思っています。 

 

Michael Borremans:ペインティングの未来を予感させる 静かで美しいシュルレアリスム|ANTENNA -CULTURE-|.fatale|fatale.honeyee.com

 

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すべてのアーティストは過去の作品から影響を受けます。ただし、リスペクトというよりリフレクトであり、リコーポレート(再統合)です。

 

観る人が、各々の思うように観てくれればいい。筆者がいて、読者がいる、といったように。両者の共同作業で初めて作品が成立するのです

 ART iT: ミヒャエル・ボレマンス インタビュー

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日本語で読める数少ないインタビューをピックアップしました。

 人は説明がないと不安になります。説明とは情報であり文字です。芸術を言葉で全て説明できるのならば、芸術自体はつまらなくなってしまうでしょう。

 (昔Youtubeで見たのですが、かつて黒澤明と北野武の対談で、黒澤明は北野武を絶賛しています。"ビートさんの映画は余計な説明が一切ない"、と。)

 ですのであまり作品をどうこう説明したり解説したりと、余計や斟酌はすべきではないと思います。ですが「自分が感じたこと」は他者の言葉や評価ではなく絶対的な根拠になる感覚です。そのような感覚を言葉にしたいがために、こうしてアウトプットしています。言語を読み、書くということ以外の「鑑賞」と「解釈」いう行為については、これからも考えていきたいです。それはさておき。ボレマンスです。

 

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 首から下がなかったり、ピエロみたいな薄い透明の膜のようなマスクを被っているようだったり。謎。 

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 あと、テーブルに手を置くパターンが多い。あと、テーブルと同化してるように腰や脚がないパターン。そして作中のモデルと決して目が合わない...

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 背景や服もグレージュのような無彩色が中心で、見ていると落ち着きます。

ボレマンスは絵を描くとき、いつもドリスヴァンノッテンのジャケットを着るそうです。ジャケットを着て描いたらうまく絵が描けたというゲン担ぎ的な意味らしい(Hugeの特集にて)。あと昨年、アンダーカバーがボレマンスのアートを服に落とし込む仕事をしています。両者とも好きだったので、発表された時はドキっとしました。

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 モデルの顔にも透明なマスク...ドリスにアンダーカバー。ボレマンスとモードは相性が良さそうです。

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現在手に入る最も密度が高い画集が「As sweet as it gets」です。とても大きく重たいのですが仏語版が欲しくてパリに行った時にポンピドゥーセンターで買いました。

この本の良いところは、ボレマンスの絵だけではなく、その参照として他の画家の絵を隣に掲載してくれている点です。例えば前回紹介したカラヴァッジョのナルキッソスも載っています。その他にもマネ、プッサン、ベラスケスからリヒターまで多くの画家が引き合いに出されていて非常に興味深いです。

連綿と続く正統的な絵画の先端にボレマンスは定位されるでしょう。過去と現代を往還するボレマンスが描く作品群は、決してアナクロニズムに陥ることなく、彼の言葉を借りれば「リコーポレート(再統合) 」することで、他にはない、静けさの中に秘められた真摯で強いマインドを感じさせます。