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ファッション/アウトドア/音楽/ミニマリズムなど

登山における「ウルトラライト」について思うこと

MOUNTAIN/RUN

 

2010年頃でしょうか、登山愛好家のなかでウルトラライト(以下UL)という考えが注目され始めました。簡単に言うと「できるだけ装備を軽量化して身軽に登山しよう」という考えです。私も登山を始めて10年以上経ちますが、登山そのものも勿論好きですが、何よりも登山の機能的なギアに惹かれます。己のリュックの中に過酷な自然を生きる術が全て詰め込まれている感が特に。

 ①ULの魅力

普段登山されない方は「登山て重い荷物背負って疲れるだけ」と思うかもしれません。確かに大半のテント泊前提の登山者は60リットル以上の重いバックパックを背負い、登っているイメージがあるでしょう。ヘビーデューティーな登山者です。

映画『劒岳 点の記』では浅野忠信演じる測量士は木型のいかにも重そうな、リュックとは言えないかたちの重荷を背負っていました。1906年の話ということは110年前もの登山の光景です。

しかし私のようなヒョロい登山者にはULという思想はこれ以上なく登山を魅力的なものにしてくれます。ULにおいてはバックパック自体が極限に軽量化され、すべてのバックパックの中身も極限に吟味した結果、軽いものが中心に選別化された結果、とても身軽に登山を楽しむことができるのです。だいたいリュックの中に、食糧や水を抜かしたいわゆる「ベースウェイト」を5~6キロに抑えられれば相当軽くなります。

これ自体とても良い発想で、私は共感できます。例えば登山靴が100g軽くなるだけで数kgの荷物がなくなるのに等しいとか。もう疲れて動けなくなる寸前の「最後の一歩」をULは推し進めてくれそうなのです。あと身に纏うものが少なるということは、自然と限りなく近くなります。ショーンペンの映画『イントゥ・ザ・ワイルド』的なものとも親和性が強そうです。

 ②ULギアを生み出すガレージブランド

私自身、ここ3年くらいから少しずつ装備を軽量化していくのにハマっています。ただ軽量化されている商品の方が圧倒的に値段が高いので、そこはお財布との相談、コツコツ揃えていく楽しみがあります。ちなみに登山の三種の神器はリュック、雨具、登山靴と言われていますが、この3つを軽量なものにするだけでも影響は大きいです。だいたいのアウトドアサイトの商品ページには重量が書いてあるので、比較しやすいです。逆に商品ページに重量が書いてないブランドは私の中で少し信頼度が低くなってしまいます。

ULを早くから取り入れている日本のパイオニア的存在のモンベルをはじめ、パタゴニア、カリマー、マムート、ノースフェイスなどメジャーな登山ブランドもこのULブームに乗って軽量アイテムを量産していますが、眼を見張るのはいわゆるガレージブランドと言われる、個人でULアイテムを製作しているブランドです。音楽で言えばインディーズ的存在。彼らもおそらく軽量化していく中で量産型のメジャーブランドでは物足りなくなったのでしょう。デザインをとっても奇をてらわない優れたプロダクトばかりです。ULブームには近年のトレイルランニングブームも重なり合っています。事実、MONTANEやSALOMON、OMMなどトレイルランニングで好んで使用されているブランドはUL志向です。ランニングと登山の中間にあるため軽量化が大きく結果に左右するからでしょう。

近年のULガレージブランドの中でもおそらく最もULユーザーに支持されているのが山と道です。とにかく見た目がかっこいい。

http://yamatomichi.com/

ガレージブランドであるがゆえ大量生産はできないので、数量が少なく、販売開始後速攻で完売になるケースが多いです。登山の服装は目立つ事を前提に作られているのでどうしても原色がメインになりがちですが、無彩色を好む私はどうも馴染めないところがあります。出来れば限りなく普段に近い服装で臨みたい。登山だけのためじゃない日常に溶け込んだものが良い。そんな欲望を彼らのプロダクトは満たしてくれます。

UL装備はいったん登山装備を揃えてしまった者にとっては、また買い直さなくてはならないという二度手間と後悔を与えますが、ひとつひとつ吟味して装備を交換していくさまはドラクエで次の街に到着して武器屋で全て以前の装備を売り払い新たな装備に一新していく快感に似ています。

一時のブームは落ち着きましたが、Appleのように毎年技術革新をうたい新製品が産み落とされるサイクルがアウトドアにおいても目まぐるしくありますが、アイテムを吟味していく楽しみは凄いです。

③ULとミニマリズムの親和性

振り返るとこのULのブームは現在のミニマリストブームのさきがけだったと思っています。ULを日常生活に落とし込むと、ミニマリスト的な生活になっていくからです。ただUL登山を推奨している訳ではありません。登山には人それぞれの楽しみがあるからです。写真が好きな人は重いカメラや三脚を持って素晴らしい写真を山で撮るでしょうし、料理が好きな人は食材とカトラリーを持って山頂で美味しいご飯を楽しむでしょう。それらはとても素敵なことで、省くことのできないエッセンシャルなものです。それぞれの楽しみの中で、ULアイテムを上手く使っていくのが一番良いと感じています。ちなみにULカルチャーの日本の牽引者である土屋智哉さんが営むショップ「ハイカーズデポ」などは、経験の集積に裏付けられたギアの知識には説得力があり、勉強になります。

http://hikersdepot.jp/

http://geared.jp/author/tsuchiya

 登山は過酷です。「なめたらアカン」の最も良い例ではないでしょうか。遭難や滑落など一歩間違えれば命を落とす危険と常に隣り合わせにいる意識を忘れないようにしないといけません。かつてアルピニストで写真家の石川直樹氏は『すべての装備を知恵に置き換えること』という本で、装備ですら役に立たない、一番重要なのは山で生き抜く知恵だと語りました。

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同様に、伊藤正一『黒部の山賊』では、北アルプスは槍ヶ岳の奥、世に知られぬ土地であった雲ノ平ないし三俣蓮華という過酷な場に根差していた山賊との交流が描かれています。山賊は近代的な山岳装備はもたないものの、まさに自然と対話することで知恵を獲得している最たる例でしょう。この本は民俗学的・社会学的な価値もあるたいへん貴重な本であり、このような歴史的背景を踏まえて登山にいくことで、より立体的ー通時的にー登山をとらえなおすことができて面白いです。絶版だったのですが山と渓谷社から再販されました。山岳ファンにはおなじみ畦地梅太郎氏の素敵な表紙です。

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 装備をいくら軽くしたところで、言語や知識は質量ゼロです。よって最もウルトラライトなのです!「全ての装備を知恵に置き換える」ことができれば素晴らしいですね。

さて、GWに入り開山祭も各所で始まる頃です。今年は北アルプスの最高峰、奥穂高に登る予定です。装備ばかりではなく、それを身にまとう自分自身の躯体もメンテナンスしないといけません。筋トレ、ランニング...もうそろそろ準備を始める頃ですね。

 

 ※2016.8.2追記

ここ数か月での当ブログをご覧いただければわかるように、ウルトラライトーミニマリズム的な思想をくみ取りつつも、次第にそこから一歩引いて、より自分の嗜好に合ったモノ選びができてきたかなあと思っています。

 

※2017.3.25追記

関連記事を以下の通りリンクします。

 

makkikka.hatenablog.com

 

 

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