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Melanie de Biasio 「No Deal」を買う

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CDを買わなくなった。Apple musicやSpotifyなどのおかげで殆どの音源にアクセス可能になったから。MP3で聴くことが主流になったいま、持ち運びすることのないCDはもはや要らないんじゃないか、なんて思うこともある。それでもCDを買う。なぜならジャケットがカッコいいからだ。モノとしてCDが欲しい。アートワークはそのアーティストの顔ともいえるし、店頭で音を確認できないCDという商品の唯一の顔とも言える。

CDを買って帰ってビニールを剥がし、蓋を開けたり中のデザインを見たり、歌詞カードをパラパラめくったりして音楽を聴く。昔からその感じが好きだ。
CDは紙ジャケかデジパック仕様が好きだ。紙ジャケのほうがレコードっぽくて味がある。プラケースは当然ながら固くて、カチカチしている。紙ジャケは手に馴染むし、薄いし軽い。レコード文化に造詣のあるエレクトロニカやDJ、ジャズ系のアーティストのCDは紙ジャケであることが多い。紙ジャケの話はこれくらいにして…
ここ半年以上Apple musicが有能過ぎて自分好みのプレイリストを作ってくれるので色々な新発見があった。今回紹介するベルギーの女性ジャズシンガー、メラニー・デ・ビアジオもそのひとり。「No Deal」というアルバム。

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漆黒のジャケットから醸し出される色気。ちなみにこの女性がメラニー。写真も粗い粒子の質感と、タイポグラフィーの配置。これは紙ジャケで欲しい。と思い立ち、購入。
音を聴く。ビリー・ホリデイやニーナ・シモンと比較されているメラニー・デ・ビアジオの声は艶があって、ちょっと擦れて、わずかな湿り気がある。ベルギーの深い夜の霧に包まれた街並みのように、沈鬱な中にメロウで甘美な響きが入り混じっている。若さというより熟練された老獪さすらただよう。あえて類比させると、UKポストパンクバンド、savagesのボーカルであるジェニーにちょっと似ている。ジャンルはジャズだが、相当なダウンテンポで、ハイテンションな感じは見られない。私が購入したのは2枚入りCDで、2枚目はREMIXとなっており、ジャイルズ・ピーターソンが担当している。そちらはシネマティック・オーケストラやHEXが参加してるので、洒落たビートがスパイスとして効いていて、Hidden Orchestra やJagga Jazzist,Amon Tobin とかニンジャチューン系の音に仕上がっている。REMIXも原曲のメラニーの声を生かしたものに仕上がってはいるが、やはり濃密で耽美なイメージをたたえた原曲のほうが好きだ。
ジャズはそこまで掘り下げているわけではないので詳しくは語れないけれど、ジャズよりもポストロック、エレクトロニカ、トリップホップを愛聴している方々ならすんなりと耳に馴染む音楽だと思う。メラニーの声自体がmassive attackやPortishead的なものと親和性があるし、ダウンテンポなところも似ている。CDの帯に書いてあって初めて知ったのだが、レディオヘッドのフィル・セルウェイが2015年の自身の年間ベスト1位に選出したというから、レディオヘッドファンにも届きうる音であることは間違いない。いわゆるジャズボーカル的なとのとは違った深みがある。
最近は帰宅後、ちょくちょくウイスキーを飲むことが増えた。メラニー・デ・ビアジオは夜の酒に最高に馴染む音楽だと思う。というかウイスキー的な酩酊をもよおす音像だ。濃密でスモーキーな潮の香りが残るアイラウイスキー的とも言えるし、血流にアルコールが混じり合うように夜の時間にゆっくりと溶け込んでゆく。でもアードベッグのような癖は無く飲み易いその様はさしずめボウモアといったところだろうか。ぜひ一度生で聴いてみたい。
そういえばパティ・スミスとフィリップ・グラスの公演を逃してしまった。パティ・スミスも一度生で拝んでみたい。
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