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裏原系とは何だったのか(2021.11加筆)

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※一番下に関連記事があります。
 
ベーシックやシンプルやスタンダードって喧伝しまくるファッション雑誌の風潮も2010年代中頃から続いてる気がします。そろそろモードやデザインからキックバックが来て良い頃だと思い長い月日が経ちます。でもスウェットパンツが細身になったりまだまだポパイ的なものの影響は続いてる様子。ニューバランスがスタンスミスに変わったくらい。もうそれも終わりかも?
 
2000年初頭に隆盛した裏原カルチャー。エイプのサルTシャツが流行りましたよね。輝かしき猿の称号。
当時15歳の私はシュプリームを着ている窪塚洋介が表紙のストリートジャックを買い隅から隅まで読み漁り、巻末ページの胡散臭い裏原ブランドのパチモン通販を眺めていました。何故かっこいいと思ったんでしょう。今でさえエイプTシャツ着用してるひとを見つけるのは難しものの、当時はオシャレの先端をいってるアイコンでした。
今見ると、ダサいんですが。リーコン、ヘクティク、エレクトリックコテージ、バル、ウィズ、サイラス、ドゥアラット、サタンアルバイト、リバース、デビロック、、、雨後の筍の如く群生した裏原ブランド。山手線ゲームができそうですよね。一世を風靡したそれらは風前の灯火、というかもう消えてしまったのか? ナンバーナインも終わり、残ってるのはアンダーカバーくらいでしょうか。

※このbeamsのカルチャー本は、年代ごとの代表的な服装が載っていてとても興味深く、資料価値が高いのでおすすめです。

 
一方でシュプリームは2010年代中頃から息を吹き返し、あの魔力が込められたボックスロゴを立て続けに出し続けています。いまだに即日完売。当時裏原全盛期の頃もボックスロゴの模造品は作るのが簡単だし、巷に溢れかえりました。しかしエイプとは違いシュプリームは今も生き延びています。それどころか近年また人気再燃しているではないですか。この両者の袂を分かつものは何か?   そんなことをぼんやり考えています。 
ルイヴィトンのモノグラムとシュプリームのボックスロゴはもはや同等かもしれない、などと。沢北と流川かもしれない、と。※現にルイヴィトンとシュプリームがコラボすることで、シュプリームは絶頂を迎え、この地点に置いてモードとストリートの垣根がなくなります。
 
さて、ここ数年のベーシック、スタンダードブームの立役者であるノームコア、ミニマリストの流行によって無地Tシャツが圧倒的に増え、同時期にパックT、ポケTなど出すブランドが増えました。無地Tシャツは主張しないことを主張します。
小学生の時に着ていたピコやバッドボーイやT&Cの陰陽模様からエイプに至る「ゴチャゴチャ系」とは対置されます。意味もわからずスーパーで買ったDJホンダのキャップを被るおじさんも、一応無地ではない限り謎の主張しています。
Tシャツはある意味下着です。アラサーになるにつれシャツの着用率が高くなり、インナーは無地Tシャツにならざるを得ません。というかそうでないと落ち着かない。
 
シュプリームのボックスロゴの発明はあの長方形の面積で最大限の慎みを持ちつつ主張してくるところです。
その主張様式はラルフローレンやラコステ、キツネに至るまでの胸ロゴに近いものがあります。キツネは確実にラルフローレン的なものを目指していると言えるでしょう。
「シュプリーム着てるぜ」感、と「おれエイプ着てるぜ」感も違います。シュプリームは最もハイセンスなストリート系だということは歴史が証明しています。アーペーセー、アンダーカバーなどとのコラボ、毎回のアーティスト写真シリーズ。すべての要素がキッズからおじさんを刺激してやみません。
 
そしてシュプリームから出たヘインズのパックTシャツ。左下に小さなボックスロゴ。そのロゴがあるだけで人はヘインズのオリジナルではなくシュプリームのヘインズを、買います。野村訓市氏はヘインズのTシャツを100枚以上持っているらしいです。ヘインズのTシャツは薄いし一枚で着るには心許ないので私は着ませんが、男のTシャツで辿り着くひとつではあるでしょう。
 
一方でプラダもマルジェラもパックTシャツを発売しています。ギャルソンもジルサンダーも無地Tシャツを発売しています。プラダとマルジェラはそれぞれアイコニックな逆三角と4箇所の縫い目。それだけが主張します。ロゴはないのですが、わかる人にはわかるデザイン。1枚1万円以上はするが、それが良いとひとは思うのです。
いわゆる究極のベーシック。慎み深い差別化を図ろうとすると、自然にブランドロゴは不要になってくるでしょう。その代わりの「わかるひとにはわかる」「知る人ぞ知る」アイコンが必要になってくる。
 
わかりやすい猿やブランドの英字ロゴ=誰がみてもわかる
わかりにくい4本の刺繍や記号=分かる人には分かる
 
エヌハリの背中についてる白いタグ。
ディオールオムのダーツ。
ソロイストの刺繍、
バンドオブアウトサイダーズのシャツの背中…
最終的にそれもいらなくね?となり、結局一巡してシンプルなものへ回帰します。
でもそれだけじゃ面白くない。ということでシュプリームのボックスロゴは要請されているような気もします。ヴァージルのoff-whiteもこの文脈で考えれば上記の前者=わかりやすいロゴに該当するでしょう。
あとちなみにマルジェラのエイズTシャツは後続したしまむらで売ってそうな英字だらけVネックのパクリも含めてもはやカッコいいかどうかも不明だなと思ってしまうところがあり、まだ4本刺繍のほうがいいけど、それでもマルジェラ感は拭い去れないわけで、そこに魔力があると思います。
 
Tシャツから離れてファッションを思うと、ストリートとモードの間のような、マルジェラの空気感の影響下にあるデザイナーたちが日本では勢いがあるといえるでしょう。
サンシー、アンユーズドを筆頭にブフト、オーギュストプレゼンテーション、ディガウェル、エンダースキーマ、COMOLI、オーラリー、ヤエカ、アレッジなどなどライフスタイル系から、サカイ、カラー、ソロイストなどの優れたモードまで。ドメスティックはいろんな振り幅があって多元化しているのが面白いですね。その分、選ぶことも楽しい反面、難しいとも感じます。
 
服のバックグラウンドを重要視するのが男です。よくジーパンに見られる縫製だったり年代だったりする「こだわり」。それ以外にも服が匂わせる「カルチャー」。文学や音楽や映画からインスパイアされた服。
ドリスヴァンノッテンやアンダーカバー、サリバンやラッドミュージシャン。今は亡きナンバーナイン。そういう音楽や文学や映画などのカルチャーが見え隠れする服。
あるいはジルサンダーやプラダなどのストイックでミニマルな服。いずれにせよ色んな要素が服にも込められています。私はおしゃれでもないのでそこまで語る資格はないけれど、それらの服の参照先を想像するだけでも面白いです。あるいはブランドによって「クセ」があらわれてくる特徴を比較してみたり。
結局何が言いたいのかわからなくなってしまいましたが、裏原みたいな熱狂的な洋服ブームってここ数年ないよなあ、と。
ポパイ男子=シティボーイくらいかな。でももう静まっている気が。ビッグウェーブに乗るしかないと思いきやシティボーイには手が付けられなかった私です。。おそらく来ないと思うけど「ニューウェーブ系男子」「ポストパンク系男子」というのなら、喜んで邁進するのですが…
とここまで2016年ごろに書いたものですが、2021年現在はPRADAのデザイナーにラフシモンズが就任し、彼特有のポストパンクな匂いのするミリタリー×ストリート×メゾンらしい品のある服作りをしています。OAMC然り、モードとストリートの邂逅が顕著なのが2010年代後半から20年代初頭と言えるかもしれません。
(2021.11月加筆)