get ready(30代男の物欲と服ログ)

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雨のザイテングラート②行程編 2016年7月16-18日

登山計画書に基づいて今回は行程を振り返りたい。
 
●日時:2016年7月16,17,18日  2泊3日 テント泊
●対象:奥穂高岳山頂
●趣旨:日本屈指の名峰であり、槍ヶ岳と並び北アルプス最高峰に位置する穂高連峰に胸を借り、自然の雄大さ過酷さ、そこでしか感じることのできない神秘を全員で共有したい。ここ数ヶ月登山関連の本を読み先人の勇気や知恵を学び、そこから見えてくる過ちや後悔など多くの発見があった。天候などの自然条件には特に気をつけたい。そしてこの山行を通じ、互いの命を預け合うザイルパートナーのような無二の強固なものにしたい思う。全員で楽しみ、乗り越え、無事に帰宅したい。 
 
データ:奥穂高岳(標高3,190m 標高差1700m 踏破実質距離27km、富士山・北岳に次ぐ日本第三位の高さを誇り、北アルプスの核心部。百名山。)
 
1日目                                 

5:25 集合 O氏、K氏の車でいざ出発。空は白んでいる。
5:50 セブンイレブンにて朝食や行動食などを調達。私は明太子おにぎりとブリトー、お〜いお茶濃い味をベースにホットコーヒーで目を覚ます作戦。加えて塩飴や干し梅やレモンや柿ピーなどの行動食(お菓子)も買う。もうちょっとあれば良かったし、大好物の赤飯おにぎりが無いのが痛恨。
6:30 さわんど駐車場着。ここで登山靴を履き、持っていくべき荷物と置いていくべき荷物を選別する。
6:40 バス乗車。皆松本バスターミナルから乗車しているからか、疲弊して寝ている中、アドレナリン放出が始まった輩三人がああだこうだ乗り込む。
7:10 上高地着 1年ぶりの上高地、登山届も事前に作ったものをスマートに投函。日焼け止めをこのタイミングで塗りたくる。 UVポケットTシャツにストライプのオックスフォードボタンダウンシャツにアルパインライトパンツ、すべて今回は奇遇にもノースフェイスで統一された装いだった。マイメン2名もそれぞれクレイジーな色を違和感なく落とし込んだ粋なミクスチャースタイル。俺だけ日常の延長線上を装っているため地味。隊列も事前に決めていたので問題なし。
7:30 歩き出し ここから横尾まではハイキングなので、ああだこうだ話しながら歩く
8:20 明神館
9:20 徳沢園着
9:30 徳沢園発
10:15 横尾着 気づいたら横尾に着いている。
10:35 横尾発
11:25 本谷橋着
11:45 本谷橋発 清流の麓で涼む。
12:35 Sガレ終盤で休憩 虫が思いの外すごいので、休憩にも注意を払う必要がある。
12:40 休憩終了、出発
13:05 涸沢トーチャク!乾杯! 涸沢は思ったほど混んでおらず、快適に過ごせた。
O隊長、Kくん:ポテチとビール 俺:CCレモン( 500mlボトル400円)
14:00 テント設営
17:50 みんなでカレータイム(900円) 伊右衛門(500ml 400円)
21:10 就寝
 夜中に雨風が強まりテントが左右に煽られながら、何度も目覚めてしまう。結果的にいつもぐっすり就寝した試しはあまりない。。

2日目                                

4:30 起床 すぐコーヒーを沸かす。俺はアルファ米の赤飯と鮭のおにぎりを食べる。食べ合わせとして味噌汁か何かスープを持って来れば良かった。あとはシーチキンとか油っぽいもの。
 5:30    出発 小雨が止まらないのでレインウェアを着る。私は今回はモンテインのミニマススモック140gとサロモンのストレッチレインパンツ100gで上下240gのウルトラライトというかトレラン的軽装。リュックはテントにデポって、アタックザックという軽量ザック(99g、15L )に切り替え、プラティパス1Lと行動食などを入れて出発。テント場上の涸沢小屋にてマムートのヘルメット(1000円 )を借りる。念には念を入れ、借りた方がいい。
いきなりガレ場(岩ゴロゴロ)が続く。これが噂のザイテングラートだよ、とか言いながらドヤ顔で登って45分くらいしたら本物のザイテングラートがあって笑ってしまった。「偽ザイテン」と命名した。雨のせいで岩がツルツルで滑りそうになるのを注意しながら三点確保で確実に登っていく。急峻な岩稜は威圧感がすごい。

 

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 視界が奪われる中の登攀となったザイテングラードの様子
 
 7:20 穂高岳山荘着 この頃にはさらに雨風が強まって視界ゼロのホワイトアウト。ビッショビショになりながら山荘の中へ。寒い。90分という、標準タイムの2分の1で到着したが、早い遅いは正直関係ない。手ぬぐいも濡れてしまい、乾いたもので体や服を拭けないというストレスがたまる。この状況で奥穂高岳を目指している人は一人もいない。諦めるかどうするか。昼頃になれば曇りになるとの予報だったが、一向に雨風は強まるばかり。とりあえず小屋の中で待たせてもらう。10時になったらラーメンやそば、うどんの暖簾がかかるので、とりあえず醤油ラーメン(900円)を食べる。なかなか美味い。体もだいぶあったまる。
11:13 雨風も弱まり、これは山頂まで行けるかどうか話し合う。高さ180mほど、50分ほど登れば着く。「ちょっと取り付いてみて様子を見てみよう」と結論を出し、外へ出てすぐ取り付き地点へ出たは良いものの、稜線から半端ない突風が押し寄せて、今まで味わったことのない恐怖が押し寄せてきた。この二重の押し寄せによって梯子の手前でこのままいくと死ぬかもしれない、と思い断念。引き返す。後々になってニュースを見たら、前穂と西穂で二人滑落していた。

headlines.yahoo.co.jp

やっぱりな、というところもある。あの突風と雨と視界ゼロとでは歩くことすら危ぶまれる。すると思考が乱れ冷静な判断が出来なくなる。精神的な状態が崩壊すると集中力が鈍り、身体の鈍りへと波及する。そこを貫く精神性を持ち合わせていなかったし、天候的に不可能だと判断できたところが大きい、英断だった。あと事前に色々な可能性を把握して選択肢をいくつか想定できていたところもよかった。最悪、中日は涸沢でゆっくりして涸沢オンリーでもいいんじゃないか、っていう3人のコンセンサスは取れていた。

11:35 雨のザイテングラート、登頂を諦めた俺たちに「下りのザイテングラート」という難所が待ち受けていた。実質「下りの方が登りより危険」という命題があるように、相当キツい。ガクガクになる膝、雨でツルツルになっている岩稜を転げ落ちないようにシンプルな三点確保で下る。とにかく無心で下っていたら、涸沢小屋に着いた。もうビショビショ。このストレスがすごい。レインウエアで濡れてはいないのだが、また外に出る手前、すぐそれを小屋で脱ぐことはしなかった。

13:05 涸沢小屋着
14:30-16:00 テントの中で爆睡
17:00 涸沢ヒュッテで再びカレー
19:00 コーヒー飲んでまったりして語らう
明日は快晴だという予兆を含んだ月と星空が涸沢を照らし出す。ここで明日4時起きで奥穂を往復しようかとも思ったが、体力と時間を考慮して、今回は素直に下山することに。
21:30〜22:00 就寝

 

3日目                           

4:30 起床 見事な快晴とモルゲンロート。気持ちいい。朝食としてお湯で3分のペペロンチーノを食べる。

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6:10 涸沢出発 晴れているので足場も安定して涸沢からは歩きやすい。話しながらサクサクと進む。
7:10 本谷橋着
7:25 本谷橋発
8:15 横尾着
8:25 横尾発
9:15 徳沢着
9:25 徳沢発
10:10 明神館通過
10:50 河童橋 話しているうちに、それでも4時間40分で河童橋に到着。ようやく観光客も増え始めて、上高地は賑わっていた。
11:00 昼食@河童食堂 山賊焼き定食(1700円)を食べる。お隣「五千尺ホテル」の食堂らしくウエイターさんもキチンとした身なりで、味も美味しかった。
11:46 上高地バス乗車 疲れて果ててちょっと寝てしまう。
12:15 さわんど駐車場着 ようやくパーキングに到着。ここで荷物の整理。この時に忘れ物などの確認をいつもし忘れてしまう。ケータイやサングラス、ヘッドライトなどの小物、お願いして持ってもらったり分担して背負っていた道具、もう帰るだけなのでここでは時間をかけてもいい。登山靴からスニーカーへはき替えるのがとても気持ちいい。サンダルでもいいと思う。
12:50 セブン-イレブンでKくんと別れる。
13:30 Oさんと二人で温泉に入って松本にて別れる。そのあと松本から東京へ帰る。
 
 
                                                     
2日目の悪天候での行動が今回最も経験になった出来事だろう。登山は山頂を目指すことが大きな目的だが、晴れの日に登ればそれはもう簡単に登れてしまう。雨風の山は晴れの日の山よりも数倍難易度が高くなる。ホワイトアウトにより位置や方向感覚を失い遭難の危険性が高まる。同時に容赦なく体に当たり続ける雨風による低体温症と、3000メートルという高所からくる高山病など身体の異変。「日常の延長線上」とはいえ、やはり外的環境は「日常ではない」のだ。だからゆっくり呼吸してゆっくり登る必要があるし、地図を読み、的確なルートを導き出さねばならない。今回は3人の結束力と信頼が下山という英断を生んだと思う。誰だって山頂まで登りたい。1年に1回、ようやく社会人3人で捻出した貴重な休みだ。これを逃せば来年以降になってしまう。しかしよく言われるように「山は逃げない」のだ。また来ればいい。
私は「経験の平等」という考え方をいつの頃か持ち始めた。誰が言い出したわけでもなく自分で勝手に発明した考え方なのだが、今回の事例を当てはめると「山頂に登る=登頂するという経験も、そこで下山するという経験も、優劣がない」という考え方だ。たとえ晴れていて登頂できたとしても、今回のような過酷な体験は出来ない。一方で貴重なワイルド体験によって登頂は先延ばしにされた。この二つのどちらが優れているということはない。自分にとって経験を肯定的なものに捉え直し、今後の糧にすること。ワイワイ楽しい登山じゃない、むき出しの自然の猛威に畏敬の念を感じ、かつ己の無力さを認識すること。様々なことがぐるぐる頭を駆け巡っているが、とにかく命一つ、身体一つしかない。この生命を維持すること。それは信頼できる仲間が、まさにザイルパートナーとして居てくれたからだと思う。三人とも今回の下山を英断と捉え、今後の登山観に深みを与えてくれるものとして捉えていたのが何より嬉しい。本当にリーダーと記録・食当の二人には感謝したい。ありがとうございました!