雑誌「GO OUT」的な都市的アウトドアの提案。ノースフェイス的な洗練されたアウトドア。それもカッコいい。が、前から書いているようにこのブログでは最高地点にスーツでアウトドアという矛盾した二項の解消と止揚に照準を合わせている。かなりざっくり言うと
アウトドア=化学繊維、カジュアル
スーツ=天然繊維、ドレス
となる。アウトドアのミシュランマンのようなダウンジャケットとキャップに化繊のパンツ。かなりカジュアル感が強い。そこに原色や奇抜なカラーが乗っかってくると、もう救いようがないほどカジュアルが圧勝してしまう。カラフルであればあるほどカジュアルになる。だからこそアーバンアウトドアは黒を志向する。アークテリクス、ノースフェイスを筆頭に、Nハリウッドとコラボしたマウンテンハードウェアは全て黒という徹底ようだ。ここでわかるのは、アウトドアのカジュアル要素を、色の中でもっともカジュアルから遠くドレスな色である黒に落とし込むことによって中和しているのである。この理論はファッションブロガーのMB氏に詳しい。要するにアウトドアでも都会に馴染むには、カラフルではなくモノトーンにしなくてはならないし、極力デザインは避け、シンプルにシフトする必要がある。
さて、カジュアルとドレスということだが、
ダボダボの色落ちデニム
黒のスリムパンツ
どちらがドレスだろうか?
言わずもがな、後者である。細いほうがドレスであり、色もインディゴの色落ちよりもっともドレスな黒のほうがドレスである。余談だがメガネも同じだ。フレームが太いほどカジュアルになり、細いほどドレス的な要素が増す。
とすると、ダボダボの黒パンツ、色落ちデニムのスキニーは、その中和とも言える。考えてみればダボダボの黒パンツは
ヨージヤマモト、色落ちデニムのスキニーはサンローランパリのアイコニックなアイテムだ。ドレスーカジュアルの理論に落とし込むと腑に落ちる。この理論、意外に間違いないのではないか、と思ってしまう。しかしそれはまた別の話、またいつかどこかで書くことにしたい…(はてしない物語)
石川直樹のEYESCREAM特集を買った。その写真の良さもさることながらエベレストなど数多の峻険な岳陵を踏破してきた石川氏の審美眼によって選別された道具も少し載っていた。ノースフェイスを基軸とした彼の道具は紛れもなく山岳地帯に順応したそれであり、私のような絵空事で構成されうるものではない。
ナルゲンは尿の容器として使われるのであり、恐らく奥山由之氏の影響下でリバイバルしている写ルンですは氷点下や高音でも耐えうるタフなアイテムとしてアウトドアの意味を付与される…このように日常的な道具にアウトドア的な意味を付与できないだろうか。そもそもアウトドア的なもの、とはいかなるものなのだろう。White mountaineeringという日本でも有名なファッションブランドは「洋服を着る全てのフィールドはアウトドア」という指標のもと、機能的で優れた堅実なウェアを作っている。事実、Whiteの服はアウトドア的な意味を付与されているのであり、そこにドレス的な要素はそこまで含まれていない代わりに、やはりアウトドアにありがちな原色を配して黒やネイビーを中心とした物作りを志向している。アークテリクスも同じ黒系を作っており、ファッションピープルに支持されている。しかしながらそこにドレス的な要素はそこまで含まれていない。私のこの逡巡は果たしてどれだけの意味を持つのだろうか。アウトドアに行くこともなく、ただブログで夢想しているに過ぎないのでは…と思うこともあるが、あえてこの命題に引き続き拘泥していきたい。
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