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The xx "I See You" レビュー

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ついにthe xxの新譜"I See You"が発売されました。待つこと4年ほど経つ私でしたが、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。各方面からのインタビューも拾い集めて読んだりして、高揚感に満ち満ちています。今までは内省的で失恋の曲が多かったのですが、インタビューでベースのオリバーは以下のように語っています。

 

 そもそも、失恋ソングを聴いて必ずしも悲しい気持ちになるとは限らないというか、号泣することが一番の目的ではないからね。むしろ、悲しみや失恋について歌った曲を聴くことで、自分自身の中にある悲しみに気づいて、それを理解して肯定してあげることで、共感が生まれて癒されることだってあると思うんだ。そこが今回のアルバムのいいところだと思うよ。喜びをたたえつつも、そればかりではない……悲しみも同時に存在してるんだよ

各方面のインタビューなどは以下の通り。

<インタビュー1>

The xxへ念願インタビュー 超待望の新作からBrexitまでを訊く - インタビュー : CINRA.NET

<インタビュー2>

www.ele-king.net

<インタビュー3>

The xx | ANTENNA -ART&CULTURE- | honeyee.com Web Magazine

 

<ネットの声>

safarina.blog.fc2.com

 日本語版の解説に書いてあったのですが、プレスリリースには「ジョイディビジョンがニューオーダーになったような」という形容があったそうです。この発言はちょっとばかし盛っている気がしますが、首肯できます。「レディオヘッドやコールドプレイに並ぶ」との形容もありましたが、自分にとってはレディオヘッド並みの影響を受けているバンドであることはまちがいありません。

 

レビュー

The xx " I See You"

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1. "Dangerous"
2. "Say Something Loving"
3. "Lips"
4. "A Violent Noise"
5. "Performance"
6. "Replica"
7. "Brave for You"
8. "On Hold"
9. "I Dare You"
10. "Test Me"

11."Naive"(Bonus Track)

12."Season's Run"(Bonus Track)

 

とにかくサンプリングやパーカッションなどが増え、Jamieの多彩さが全面に行き渡っており、今までのモノトーンから一転、かすかに色が添えられていると感じます。xxはIntro,angelsと一曲目から名曲をぶつけてきますが、今回も期待を裏切らない幕開け。M1の"Dangerous"を聞けばそれがわかります。今までにない硬質なビート、BurialやFour tetを通過したJamieのトラックメイキングのセンスが存分に光っています。フロア完全対応の上質でおしゃれなダンスミュージック。Dangerousという題名通り、途中に入ってくるサイレンの「ウォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」というサンプリングがたまらなく好きで、途中からビートの4つ打ちとRomyの声だけになる箇所があるのですが、そこもスリリングで美しく、たまらなくソワソワします。

M2"Say Something Loving"も、これまた今までにない温度感を持った親密なラブソングです。Say Something Lovingと二人で歌うところ、RomyとOliverの気持ちがとてもあったかく、聞いていて春の陽光を感じさせる気持ち良さがあります。これも今までになかったポップソング。Jamieは一番のお気にいりだそう。

I don't know 

What this is but it doesn't feel wrong

(わからない、これが何なのか。でも間違いだとは思わない。)

 

 M3 Lipsは荘厳なコーラスのサンプリングから始まって、今までのxxに近い部分も感じます。M4 A Violent Noiseは「乱暴に響く」という名前と裏腹にしっとり聴かせてくれますし、M5 PerfomanceもRomyの透明で艶やかな声が切ない歌詞に乗ってとても静かにxxの世界に聴き入らせてくれます。M6 Replicaも同様RomyとOliverの掛け合い、コーラスの妙。レプリカ、模造品。「25歳で私にそっくり」「まるでわざとみたいに、私はあなたそっくりになった」...恋人を好きになって似てきてしまうことを歌っています。M7 Brave For Youは「あなたのために勇敢になる」「怯えてしまうと、あなたがそこにいて勇気を出せと言うのを、私はイメージする」など恋人のためを思ったバラードで、Romyが一番気に入っている曲だそう。これもしっとり系です。

M3~M7というアルバムの中盤は、バラード中心で、従来のxxを踏襲した夜の音楽。音数もメロディも歌詞も制限されて、とても甘美で憂鬱です。そしてここからもう一捻り、このアルバムは転回を迎えます。

 

M8 On Hold

www.youtube.com

 

アルバムの中核として位置しているのがOn Holdでしょう。歌い始めの Romyの声がとにかく至高。「あなたを責めてはいない。お互い流されてしまった。しがみついてはいられない。からっぽの空間。」「あなたをキープできてると思ってた」切ない歌詞とダンサブルなトラック。まさに4年半越しのxxの進化を感じさせる一曲です。豊洲でのパフォーマンスも素晴らしかったです。 Jamieが2つのMPCを往還するところがなんとも可愛かったです。 Youtubeでのフロント2人のSAINT LAURENTもとても似合ってます。

M9 I Dare Youは、On Holdの流れをくむ極上ポップソング。「ロマンチストになってからずいぶん経つ ラブソングしか聞いてない」「あの時聞こえたみたいに今歌が聞こえてくる」M8とこのM9がこのアルバムのハイライトと言ってもいいでしょう。

M10Test Meはどこか和っぽい旋律で、前作のcoexistを感じさせつつもJamie色が出ていると思います。

M11.M12のボーナストラックも彼ららしい音の仕上がりで妥協のない2曲。

 

と、駆け足で簡単にレビューしましたが、Jamie xxのソロが反映されているアルバムであるという点において前2作の徹底的に構築されたミニマリズムの美学は薄れています。そのかわり「JOY DIVISIONがNEW ORDERになったような」、初めてと言っていいほど外向きのベクトルが生まれました。内省的な仄暗い夜から朝の曇り空から差し込む洗いたての陽光のような温度感と親密さを感じることができます。xxはあまりにもイメージが先行しすぎて「内向的で繊細な少年少女」像がつきまとっていますが、ブログ冒頭に貼った写真が象徴しているように、彼らは笑っています。こんな姿が4年前に見られたでしょうか。固いイメージの外殻を打ち砕いて、より音楽に対してポジティブに、楽しんで接しているような気がして、そんな楽しんでいる3人の姿を見ているとこちらまで楽しい気持ちになってきます。音楽って本来楽しいものなんだなあと。

ロックでもエレクトロでもなく、ポップなんだなあと。明らかに彼らの音楽はポップであり、ポップであることを否定しない彼らは強いと思う。ウィキペディアでは「ポストポップバンド」と説明されているけれど、よくわからないけれどニューウェーブともポストパンクとも言えない「彼らだけの音」になってしまっています。これで3作品が出揃ったことになります。豊洲のライブが終わってしまったので、新譜を聴いてからライブに行くことは当分先かもしれない。でもそろそろフジロックやサマソニのトリで来てほしいし、そのくらいのバンドであることはもう証明されていると思うので、ぜひ今年、またxxを見たい。期待しています。

 

 

 

 

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