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エリザベス・ペイトン展:Still Life @原美術館 感想

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ペイトン展に滑り込みで行ってきました。

大好きな原美術館。こじんまりした建物でゆっくり見れる感じが大きい美術館と違って好きです。国立新美術館や東京都美術館がビッグメゾンのLVMHやケリングだとしたら、原美術館やちひろ美術館はドリスヴァンノッテンのアトリエのようなイメージ。ちょうど学芸員さんのガイドツアーの時間帯もあり、解説も交えながら鑑賞することができました。

まず上の絵。これは誰でしょう?

眠っている女性でしょうか。私にはそうにしか見えませんでしたが、実はこれ、カート・コバーンを描いているみたいです。カートが自殺したことはペイトンにとって衝撃的であり、昔からロックスターにあこがれが強かったペイトンはこの衝動を絵にせざるをえなかったといいます。でもこれはカートには見えませんよね。彼女がイメージの中で描いたカートなんです。なので彼/彼女は口紅を引いています。

ペイトンの特徴のひとつは、その肖像画の対象をジェンダーレスに描くということにあります。このカートはまさに現実のカートを超えて、輪廻転生したかのような、ヴァージニア・ウルフの『オルランド』のような男と女の転身を想起させます。

他にも彼女の心酔するナポレオンやセックスピストルズのジョン・ライドン、シド・ヴィシャスなどがあくまでペイトンのフィルターを通してみずみずしく行き渡る光彩によって描かれています。ペイトンは油彩が主ですが、とても薄く絵の具を延ばすらしく、水彩的な淡いイメージが特徴です。油彩でここまで淡く繊細な画も少ないのではないでしょうか。そして顔にとてもこだわっていて、顔をかなり緻密に描いています。そしてそれ以外は結構雰囲気でふわっと描いている。細部まで緻密に書かないことで緻密な描写を際立たせていました。

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自分の愛する対象を描くというのは、とても幸せなことだと思うし、その対象への愛情を感じました。パティ・スミス、ストロークスのジュリアンや、ピート・ドハーティ、クロエ・セヴィニーなど稀代のロック=ファッションアイコンを描くのがキャッチ―でもあるので、音楽好きやファッション好きの方にも届き得る射程を兼ね備えた画家だと思います。クールベなどの画家から継承されている正統性と、ちょっとモダンな、今風にいえば「抜け感」が絶妙な塩梅で同居しています。ガイドさんも言っていたようにペイトンの絵には「余白」があり、それが空間の均衡を保たせているとも感じました。

会期はあとわずかですが、都会の喧騒から少し離れた静かな芸術体験が味わえる贅沢で稀有な空間です。

 

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過去に原美術館で見たボレマンスについて描いた記事はこちら↓

makkikka.hatenablog.com