get ready(30代男の物欲と服ログ)

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プラダのシャツと言語表象

洋服をエクセルで管理している、と話したら友人にエクセルおじさんと言われてしまいもういっそエクセルおじさんでも良いと思い始めている。

エクセルで洋服を管理するメリットは以前書いた通り。

 

makkikka.hatenablog.com

 とにかく自分の持ち服が文字通り一目瞭然。

色、数、種類、かたち。

買う前に、このシートをぼーっと眺めてみる。

黒が多い。ネイビーも多い。白はもうちょっと増やしてみるか。と。

私は基本的に黒とネイビーが多い。パンツはほぼ黒。

冬は上もネイビーと黒なので、相当全体的に重くなる。

冬なのでそのコーデで許されるが夏は見た目が暑苦しい。

逆に全身黒なら涼しくなるんじゃないかと思ったけど暑苦しい。

特にタイトな黒は暑苦しい。

もっとさわやかなやつ。夏のハレクラニのテラスで飲むモヒートのような爽快な。

白もいいけど、もっとミントのガムを噛んだとき口元に広がる爽やかなミントのような。

そうだ。

兄に貰った、プラダのハーフスリーブシャツがあった。

これだ。

エクセル管理おじさん的に求めていた夏にあうミントに近いブルーとグリーンの中間の、なんともいえない色だ。

かつて芸大卒の職場の同僚はこう言った。

「本物の画家の使う色は、赤、青、黄色などという言葉では表現できないんです。言葉では表せない色を使うんですよ」

このシャツまさに同僚の言葉を想起させる。

免れた色、と書いて免色という人物を逆説的に彫琢した村上春樹。

あるいは固定指示子という言葉で「固有名詞は確定記述の束に還元しえぬ」というヴィトゲンシュタイン以降の言語哲学を更新したクリプキ…

あるいは対象aを語る懐かしきラカン…

どうでもいい。

それを示す色の言葉が出てこないという現象。ある人が見ればグリーンでもあり、ある人が見ればブルーでもある。しかも薄いグレーが混じったようなグリーンで落ち着きがあるようにも思われる。ピカソのキュビズム的志向を備える色、などといえばオーバーか。

閑話休題。

生地はいわずもがな最高。

重みを取っ払って軽快に行きたい、そんな今夏。

新しい服を買おう、どれがいいかな、と迷っていた最中に自らの内に見出したプラダ。

灯台下暗し。

良いものは必ずしも外部にあるのではなく、内在する。

というか、忘れ去られていた、もう要らないと思っていたものも、もう一度見返せば、言い換えれば「自分や世の中的なモード」が変化すれば、新たな価値が付与される。

タックインなんか秋葉原のオタクのイメージだったのに、もう今やヴェトモンを筆頭に世界最先端のモードに昇華されている。あれほどダサいと思っていたものすら、カッコよくみえてしまうのだ。タートルネックだってニューバランスだって元来イモっぽいアイテムだったはずだ。

マルクスもびっくりの弁証法。それがファッションでは機能してしまうのだから

エクセル管理おじさんも迂闊に断捨離できないものです。