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DJ Krush『軌跡』Live@Sound Vision

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11年前の2006年9月、ニューヨークに私は居た。NYに住む兄に連れられてDJ Krushを初めて見た。高校の頃からDJ ShadowやMowaxレーベルが好きだった私にとってNYでKrushを聴くという体験はあまりにもドープだった。モンモンと焚かれた煙の中で酩酊状態になった色とりどりの人々の中に紛れて踊り狂った私は20歳になったばかりだった。

余計な装飾なんていらない。ラップすらも排除してしまったKrushのトラックは、これ以上にないほどミニマルに構築されている。そして煙たくモンモンとしたダークな雰囲気のなかに、どこか洗練された上品さがある。そこが彼の魅力であり、彼の音だと一発でわかるものがある。

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あれから10年、30歳になった私は5年ほど前から意識的にヒップホップを聴くようになっていた。ヒップホップを抵抗なく聴くことができたのはshadowやkrushが居てくれたからに他ならない。

昨今のフリースタイルブームは、フリースタイルという競技自体がパッケージ化され消費され、肝心の楽曲にまで興味関心が行き届かない、という問題は周知の通りだし、残念ながらここまでの盛り上がりを見せるフリースタイルダンジョンにおいても楽曲はフューチャーされていない。フリースタイルはヒップホップの一つのアートフォームではあるけれど、私はやはり楽曲が好きだ。

キックザカンクルーから遡ってライムスターを聞き、ジブラから遡ってキングギドラを聞き、マイメンから教わったソウルスクリーム、そしてブッダブランド、雷...

特に「蜂と蝶」「証言」「人間発電所」に至っては何度聞いたかわからないくらいリピートしている。その他多くのクラシックたち...

レディオヘッドやビョークやシガーロス最高、ヒップホップださいとか思っていた20歳くらいの俺自身をフルボッコしてやりたい。MC漢でさえビョークに匹敵するトラックにクラクラするフローを載せているのだ。どっちが凄いとかではない。とにかくヒップホップの方法論はクールでハイプなのだ。昔の「あ、このフレーズよくね」をAKAIのMPC1000あたりに取り込んでループさせる感じ。煙たいビートに乗せる感じ。上に挙げた3つのクラシック、マスターピースはそのお手本になるような曲だ。

 

と話がヒップホップにすりかわってしまったがDJ Krush,今回のアルバムは彼のキャリア初となる「ヒップホップ」「ラップ」アルバムだ。DJ Krushの楽曲はその殆どがインストゥルメンタルであり、歌詞がない。それがshadowやkrushの優れた点だが事実参加のメンツを想像しただけでKrushとのコラボレーションのヤバさが伝わってくる。まずKrushはフロアを温めるためにchico carlitoやBOSS THE MCとのあの名曲candle chantをカマす。そして個人的な頂点は「人間発電所」だ。DEVLARGE亡き今、もう私はbuddhaをタイムリーで聞くことは出来ない。おそらくフロアで聞くこともなく、きっとずっとヘッドフォンを通して聴いていくエバーグリーンなクラシックなんだろうと思っていた。しかし、時は来た。真夜中1時過ぎの渋谷の地下、イントロでアドレナリンがドバドバと放出される。今年一番感動した瞬間だったかもしれない。Buddha×Krushとかいう異ノーマルで並外れたスキル同士の邂逅。。ある程度空でも歌えるようになっていたので踊りながら歌う。

最高な状態でKrushがスクラッチをカマす。そしてクセがすごいラッパーとの饗宴。OMSB、Meiso、呂布カルマ、チプルソ、5lack、志人、そしてRINO。ラッパーのクセがすごいんじゃ。個人的には呂布カルマの世界感がとてもKrushとマッチしていて素敵でした。やっぱ好っきゃねん。ヤングたかじん。もうこの辺がメインなのですが、これ以上書いても無駄だと思うのでやめておく。最後にマイクリレーとして「証言」。まさかリノの「要件1、投げんなよサジ」が聞けるとは思わず。他のメンバーもフリースタイルで「証言」。これはヤバい。Krushと「証言」。「人間発電所」に始まり「証言」で終わる、まさに日本ヒップホップの最高峰の「軌跡」に包み込まれたセットリストに脱帽。お腹いっぱいすぎました。各MCの言葉から本当にKrushと共演することがどれだけ彼らにとって奇跡的で光栄なことなのかが伝わってきた。チプルソは20歳の成人式に聞いたKrushに衝撃を受けてラップを始めたという。すべてのヒップホップアーティストに、そしてヒップホップそのものに愛された存在であるKrushのコスりがまた生で聞けたことは本当に素晴らしい体験だった。今月発売の新譜は間違いなく、昨今の残念なトラックメイキングが跋扈するなかで一石を投じる間違いようのないDOPEそのもの。こういったアンダーグラウンドなサウンドからヒップホップの更なる盛り返しを見せてほしい。