get ready(30代男の物欲と服ログ)

都内/三十代男性/既婚/会社員/メンズファッション/アウトドア/音楽/ミニマリズムなど

PATERSON 

 

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ジムジャームッシュの新作『パターソン』を早稲田松竹に見に行ってきた。昨年も劇場で見ていたがもう一度どうしても見たかった。

 

ジャームッシュ作品はどれもDVDで持っているくらい好きだけど、『パターソン』はジャームッシュの集大成的作品であると同時に、今迄のどの作品より親密で愛おしい作品だった。

 

リラックスできて、肩の力が抜けて、ゆっくり見ることのできる映画。何もどんちゃん騒ぎは起きない。起きないけれど確かに変化する反復する日常をとても丁寧かつ緻密に、かつミニマルに描いている。

 

この作品自体が詩であると思う。

WCWや何度も反復して登場する双子のモチーフ。ある双子の読む詩はとても美しい。あるいは永瀬正敏が見せる詩が好きな日本人とベンチで話す最後のパターソンと黄昏。

 

私たちの多くは特別な才能を持つアーティストではない。パターソンも同じだ。そこが良い。

つまり「私もパターソンなのだ」と思えるのだ。落ち着いた生活をし、自分の仕事に励み、その他の時間を大事な恋人や犬やバーの仲間と過ごす。特別な人間ではなく、パターソンは私たちなのだ。

 

パターソンがバスの運転手という社会に属しているところも以前のジャームッシュとは異なっている。異邦性が良い意味でなくなっているのだ...とはいえバーで出会う失恋野郎、ランドリーで詩を読みまくるメソッドマン、通り過ぎるヤンキーなどアウトローの形象は外的なものとして散見される。だが荒々しさやスモーキーでダーティーな香りはしてこない。

あくまで対象は愛すべき彼女がいる凡夫の日常の生活で自然と湧いてくる詩がテーマなのであり、「われわれもパターソンなのだ」と思う限りにおいて、われわれの生活も詩なのだという解釈をゆるす…

とても思慮深く、小粒なのに味わいのある熟達した職人の作る寿司のような逸品だった。

ジャームッシュはミニマリズムだ。

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