先週BECKのアコースティックライブに行ってきました。BECKは僕にとって高校の時からアイドル。ファーストアルバム「Mellow gold」から新作までを織り交ぜながらアコギ一本、スーツ姿で直立で歌うBECKの姿は美しく、ときに優しかったです。六本木EXシアターはJJJ以来でしたが、距離を感じない空間で、よりBECKを親密に感じることができました。ラストにGirl,Loserという流れも痺れました。
ここ数ヶ月、ニールヤングやビートルズなどを聴いていたこともあり春の訪れより早くオルタナブームが到来しています。
そんなBECKのライブ前、友人と六本木ヒルズのUAを一瞥。奥のドレスコーナーにジャコメッティのシングルモンクとクロケット &ジョーンズのボストン2を目ざとく発見。開演前なのに、忙しく駆け回る店員さんに話しかけて試着。
ジャコメッティ のシングルモンクは思った通り細身でトゥがやや鋭角寄りで、明らかなドレスの香り。一方でボストン2、思った通り卵型よりもやや細いラストとトゥで、その時に履いていたシオタチノにもハマりました(シングルモンクは合わなかった)。いずれ買うアイテムであり、どうせ値段も上がることはわかっているので購入。クロケットの革靴は初めて。
「ブラウンスエードのローファー」という、今まで欲しくても後回しにしていた物欲を漸く満たすことに成功。どこにベックのライブ前に靴を買う奴がいるのでしょう。
さて、ボストン2というのはクロケット の中でもベーシックなローファーであり、「ボストン」というローファーの後継モデルであり日本人に合わせたラストにモディファイされているとのこと。なるほど足を入れたときや歩いた時違和感がなく、4日ほど履いてますが靴擦れも起きていません。
モカの縫い込みも手作業でおこなわれており、確かにパラブーツのラギッドなモカより繊細な印象を与えてくれます。
カーフスキンのスエードも上品な起毛と柔らかさがあります。普通の黒や茶のローファーより優しくあたたかい表情で、カントリーやドレスを崩すスタイルにもうってつけでしょう。
この踵部分も小ぶりなのですがホールド感が確かにある。抜かりがありません。この斜め後ろから見た丸みが好みです。
ソールはダイナイトソールに似たシティソール。遠慮なくガツガツ履いていけるシティソールをピックしているのも、この靴を買った理由の一つかもしれません。
履いてみて、驚くほど今の自分のスタイルにしっくりきて、自分の目は間違っていなかったという自負を感じつつ、柔らかい高揚感に包まれています。
この靴が主役で輝くことはないかもしれない。けれど確実な引き立て役になる。スラムダンクでいうところの「鰈」としての赤木。
クロケットは、その正当性や誠実さのおかげで、もしかしかたらパラブーツやジャコメッティ 、あるいはチャーチのような派手さがない、地味なブランドであるかもしれません。あと流行ったりしない。
このローファーもわかりやく華美なムードはありませんが、じっくり見るとそのラストやステッチ、ヒールカップ、スエードの質感一つ一つがべらぼうによく作られており、その良い意味でクラフトマンシップを感じさせない「さりげなさ」が魅力に映ります。クラークスなどスエードのカジュアルシューズとある中で、それよりも普段のスタイルをドレスアップしてくれます。
イメージはジョージハリスンやBECKみたいな、いなたさがありながら上品さも担保しているミュージシャン。
「BECKのライブ前に買った」という記憶とBECKのライブは、この靴を履くたびに思い起こされることでしょう。そしてBECKがアコギで弾き語りすることで既存の曲がざまざまな表情を見せるように、スエードのローファーひとつで自分の既存の服が輝きを取り戻しつつあります。