get ready(アラフォー野郎の物欲と服ログ)

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STOP MAKING SENSE(1984)

 

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トーキングヘッズ。

 

高校2年くらいの時、深夜にMTVでトーキングヘッズの「Once in a Lifetime」を見た。何か奇妙な踊りを踊るオッサン。カッコ良すぎた。

 

村上春樹の『ダンスダンスダンス』で少女がカセットでトーキングヘッズを聴いていたような。

 

あるいはアンダーカバーの2010年くらいの春夏コレクション。パティスミスっぽい感じなのにテーマはトーキングヘッズだった(気がする)。そのときのアンダーカバーで発売された赤が鮮烈な「サイコキラー'77」のTシャツを親友から貰った。

Youtubeでサイコキラーを見たらベースの女の人がクールすぎた。

 

そのようなうろ覚えのパッチワークで私のトーキングヘッズ像は出来上がっていた。

 

ここ数年でジョイディビジョンやニューオーダーを聞き返す機会が多くなったせいもあり、トーキングヘッズも久々に聞いてみたいと思った矢先、Bunkamuraのル・シネマでトーキングヘッズの映画「ストップメイキングセンス」上映との情報を見て、行くことに。日曜の夜なのだが20数名程度で、年齢層は40代くらい。一人で見に来ている方が多く、とても落ち着いていて、喋る人も居らず上映開始までホールは沈黙に包まれていた。

 

 

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ボーカルのデイヴィッド・バーンが舞台下手からカセットテープを持って登場する。舞台のトラスはまるで工事現場のようで幕もなく、ギター1本で歌い始める。テープからはリズムマシーン。シンプルな「サイコキラー」。ときにフランス語もおりまぜる。

 

Phycho  Killer, Qu'est-ce que c'est?

サイコキラー、そりゃ何だ?

 

曲の終盤、リズムマシーンが変則的に打ち込みを刻み始めバーンが倒れそうになりながら変な踊りを始める。

ポポポポする打ち込みの音は808系のcowbell。世界に引き込まれる。シンプルで何もない。歌詞も沈鬱でもない常温感。

 

そこからこの映画 (ライブ) がゆっくりと起き上がり始める。

ベースのティナが現れ、次第にメンバーが舞台上に集結する。

単音だったメロディーに一つ一つ音が加わる。

身体的で熱い血が通ったグルーブが否が応でもこちらの体を揺さぶる。

 

監督のジョナサンデミは『羊たちの沈黙』を撮っているらしい(どうやらニューオーダーのPVも撮ってるらしい)。『羊たちの沈黙』以外見てないし特に気にすることなかったけど撮り方も良いけどなんせ照明が素晴らしい。

 

私が一番好きなのは「Once in a lifetime」だけれどもそこでのデイヴィッドバーンは神懸かり的だ。狂ったヘンテコ踊り。

きっと情動、言葉と音と身体を使った音楽の自然な姿なんだろう。暗黒舞踏系とは言わないけれど。

イーノを迎えての名作「Remain in Light」を誰かが「原子と原始の融合」と表現したとか。言い得て妙だと思う。融合の果ては幻視もあるかも? そんな世界。そして身体表現と音楽表現は分かちがたく結びついているのだろう。

 

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時の流れに身を任せろ、と。

スーツと髪型とメガネと所作と。様式としてもトーキングヘッズはかっこいい。フワフワと鳴るシンセサイザーとサビ部分のコーラスも良いけど、自分で自分に話しかける仕草をするバーンのコミカルさ。

シリアスでもあり、コミカルでもあるし、なんかセクシー。

 

逆に思い出したのだけれど

ランナーのサンプラザ中野の、ガチ直立不動もかっこいい感もあるっちゃ、ある。

 

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直立不動。リズムはノリノリなのに、不動。逆に良い。

デッカいピンクのダブルのジャケットもバブリーで、良い。

でも直立不動は初めだけで、あとは規則正しい所作。

 

それはそれとして。

 

バーンの神経症的な立ち振る舞いがもたらす混沌と秩序が往還する空間。

正直英語は全然わからないで洋楽を聴いているタチで映画だから字幕に助けられたけれど、全体の雰囲気は、躁的なもの。

ジョイディビジョン、そしてトーキングヘッズの曲名をバンド名に冠したレディオヘッド。彼らにはないピエロ的というか、そういう部分が好きなんだと思う。

あとアフリカンビートに接近したとか、ブライアンイーノとの親交とかいろいろ情報はある。

このへんの1970後半〜1980年前半のポストパンク〜ニューウェーブのカルチャーが気になっていたのでそういうこともディグりたい。

 

話が蛇行したけど、普通に視覚的に訴えるものが多い映画だった。パフォーマンス、コーラス、そして笑顔。みんな幸せそうに、楽しそうに演奏していて、そこが一層こちらも楽しくさせてくれた。

音楽は自分の心情の吐露と情動の発露だとしたらトーキングヘッズはそれを何のカッコつけも衒いもなくフィルターなしでやってのけている。それが何より魅力的なのだろう。これからもうちょっと聞いてみよう。