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The xxという発明

レディオヘッドの記事がバズってしまい、こんな誰も見にこないブログが公になってしまい厚顔無恥の醜態が晒されることになってしまい忍びないですが…今回も音楽ネタです。

 

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おそらく二十代で出会った音楽の中で一番好きになったバンド。

疲れた時や寝れない時もベッドの中で音楽を聞きたい。でもビートもメロディーも要らない。そうなると必然的に流していても気にならない音に絞られてくる…

大学院の頃に初めてTheXXを聞いた。スカスカな音で面白みを感じられなかった。フランスに留学していたときにCDショップで2枚目のアルバムが発売され、大きく取り上げられていた。食指は伸びなかった。それから帰国してちょっと。あまり激しい音楽を聞けない時期がしばらく続いた。音楽なんて聞かなくても良いのに、なければないで、落ち着かない。寝る時に聞く音楽が欲しかった。ブライアン・イーノというアーティストがいる。彼はプロデューサーでもあるけれどソロで音楽活動をしている。いわゆる「アンビエント」と呼ばれる部類に属しているその音は、ビートがなく特定のリズムもない。単音のピアノなどのループ。1曲10分超が普通のイーノのアンビエントは速攻寝ることができた。が、ビートが欲しい。めっちゃダウンテンポでビートが欲しい。そうすると思い浮かぶのがマッシヴ・アタックやポーティスヘッドという、90年代前半にUKのブリストルで生まれた陰鬱で甘美なサウンドだった。ヒップホップのビートにも影響を受けているそれらのサウンドは心地いいけど、睡眠誘発的効果よりも心の芯でトリップしていく高揚感がある。テンポは遅くて気持ちいいんだけれど。あるいはボーズオブカナダやウルリッヒ・シュナウス、タイコなどの空間系エレクトロニカ。これは良い。曇り空や夕日の海辺で聴きたくなる。けれども、もうちょっとメロディーも欲しい。バンド形式なら尚更良い。さーて、困ったなあ。どうしよう。と思ったときにふと聞いたのがThe XXだった。

 

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The XXは当時20代前半の4人組(現在では3人組)。その時は若者が作る音楽に対して若干距離を取っていたせいもあって、あまり好感は持っていなかった。しかし、このアルバムをすぐ買って聞いてみると、自分の心情にこれ以上フィックスする音はほかにないんじゃないかと思うほど、疲れた身体に染み渡った。そこから毎晩毎朝のめりこむようにXXを聞いた。当時、後にグラミー賞を受賞するBeckの快作『Morning Phase』が出た。ゆったりとしたビートに朝の光が夜明けの薄暗い部屋のカーテンに差し込んでくるかのようなあたたかな温度をもった音だった。に対してXXはあくまで夜の音楽。ジムジャームッシュの映画が夜の映画であるように。満たされない空虚感を抱えて暗い夜道を歩いたり、落ち込んで部屋でひとり酒を飲んでいたり、とりかえしのつかない喪失に嘆いたり。好きだった恋人とはなればなれになったり。そのような状況に少しでも置かれたことのある人であればXXの音楽はその耳に響くはずだ。

まだ2枚しかアルバムを出していないが、すでにその2枚はマスターピース。20代前半では成し遂げられえない老獪な経年変化を遂げたミュージシャンの如く、彼らは音楽を構築していく。儚くて切ない曲を支えているのがギターボーカルのロミーとベースボーカルのオリバー。ロミーとオリバーのユニゾンが彼らの世界を世界たらしめている。そしてサンプラー兼ディレクターのジェイミーXX。彼こそがXXのベースであり、骨格をかたちづくっている。エレクトロポップと呼ぶにはいささか躊躇してしまうほどに単なる打ち込みの枠組みを超えている。ジョイディビジョンやブリアル、あるいはポーティスヘッド的な陰鬱さをたたえている。が、よりポップにまとめあげている。

 

3年待っても、まだアルバムが出ない。もうそろそろ、出てもいい頃なんじゃないか。