良い作品とは、「これは自分のことを歌っている(語っている)」と思えるものだ、
というテーゼがある。
期待してゆっくりと待つということをする行為の大切さ。テレビドラマ、漫画、洋服、そして音楽。
the xxというバンドは、以前も書いているように私にとって20代後半のもっとも重要な年齢に浴びるように飽きず懲りず聴いた音楽であり
朝も昼も夜も風邪で寝込んだ時も
眠れない夜もとなりで静かに寄り添ってくれる音楽に他ならなかった。
そんな音楽のような人になりたいと思った。
私よりもはるかに若い20歳の若者の才能に嫉妬するどころか、この3人がこの音を作り上げた事実に感動を覚えた。
必要最低限に引き算された音数で構築された音像はミニマルだけれども有機的であり、ロミーとオリバーの声はいつも優しく耳に語りかけてくる。
コンセプチュアルなジャケットや音や服装。
いまの私はthe xxを軸として生成されているのではないか
言わばthe xxは自分の構成要素の分水嶺であり、それ以前と以後で自分は明確に変わってしまったと言い得るかもしれない。
1枚目、2枚目という紛うことなき傑作からどのような変化を遂げるのか。ずっと私は想像していた。ジェイミーのソロは本当に色彩があふれんばかりにthe xxと対照的な音だった。それがいかにして次作に反映される/されないのか....
昨日、4年ぶりの新譜が発表された。
本当に嬉しかった。来月の来日、そして来年1月の新譜。こんな幸せがあっていいのだろうかと。
そして今朝、おもむろにyoutubeを開いたら新曲がアップされていた。
ロミーの声が響いた瞬間
身震いした。
冗談抜きに涙が出そうになった。
この4年で間違いなくthe xxは闇から光を掬い取っていた。ジェイミーのソロを通過して到達したその光はキラキラと眩しいものではなく、薄暗いロンドンの曇り空の向こうにある陽光が柔らかに降り注いでいるようであり、その中に彼らの知性と感性が折り重なり、すべてを肯定するような音像となる。蛹から脱皮した蝶のような。 それは私にとっての光でもある。
the xxよ、本当にありがとう。
あなたたちが居てくれて本当に良かった。
私はきっと彼らに恋をしてしまっている。