get ready(30代男の物欲と服ログ)

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パリジェンヌはどこにいるのか?

 

 

けっこう前に流行っていたこの本に乗じてパリの生活やパリジェンヌのライフスタイルを称揚する本が雨後の筍の如く跋扈していますが結局この本は一度読んで母親にあげたら母も誰かにあげたらしくあまり参考にならなかったらしい。

目次は以下の通り

 

 
◎目次 Introduction 日常が突然、特別なものに見えてくる

Part 1 食事とエクササイズ
Capter1 間食はシックじゃない
Capter2 食べる喜びを我慢しない
Capter3 面倒がらずに体を動かす

Part 2 ワードローブと身だしなみ
Capter4 10着のワードローブで身軽になる
Capter5 自分のスタイルを見つける
Capter6 ノーメイクみたいにメイクする
Capter7 いつもきちんとした装いで
Capter8 女らしさを忘れずに

Part 3 シックに暮らす
Capter9 いちばん良い持ち物をふだん使いにする
Capter10 散らかっているのはシックじゃない
Capter11 ミステリアスな雰囲気を漂わせる
Capter12 物質主義に踊らされない
Capter13 教養を身につける
Capter14 ささやかな喜びを見つける
Capter15 質の良さにこだわる
Capter16 情熱をもって生きる

 なるほどいいこと尽くし。

だが出オチなのが著者がフランス人ではなく留学してたアメリカ人女性という。「マダムシック」と呼ばれる『プラダを着た悪魔』のおばさん的な人から叱咤を受け『プリティウーマン』よろしくパリジェンヌ的なライフスタイルへと変貌を遂げるというサクセスストーリー。即座に「問いが提出される」(アルトー)。

「服を10着しかもたない」=パリジェンヌなのか

と。

「間食をせず、食事を楽しむ」=パリジェンヌなのか

と。

そしてそれ以前の問いが前景化する。パリジェンヌとは誰なのかと。

この本は50万部売れ、それに類似する本も軒並み売れているという。

日本人女性がパリジェンヌになることはいかにして可能か。

日本人女性が想定するパリジェンヌとはだれだろうか。

カトリーヌ・ドヌーヴ。 

アンナ・カリーナ。 

オドレイ・トトゥ。

レア・セドゥ。

ジャン・ピエール・ジュネの『アメリ』は間違いなくパリへの憧憬を日本へ根付かせただろうし、フランス的なものへの憧れはいつまでたっても消えることはない。『ファッジ』や『クルーエル』はいつでも華美なイメージを私たちに提供してくれる。A.P.C.やMAISON KITSUNEからSAINT LAURENT,MASION MARGIERAまで。

 

が、パリは実質きたない。くさい。あぶない。セーヌなんてドブみたいにきたない。

それを差し引いてもキラキラと輝く魅力がパリにはある。エッフェルやサクレ・クールや凱旋門やルーブルに行かなくとも、裏通りのカフェでゆっくりとエスプレッソをすすってルモンドを読んでるひとたち。そういうところにパリっぽさがあって、パリジェンヌってそういうところに居るんじゃないかなあと思う。

何が言いたいかというときっと日本がパリに抱く「パリジェンヌ」は表象=representationされたもので、ボーダーにジーパンにベレー帽にメガネかけた女の子はそんなに居なかったなあという実感で、この本が提供する情報はあくまで外部的な視点で見たパリでありパリジェンヌであるということ。

しかし少なくともいえることはパリジェンヌ的なシンプルなファッションは現在のノームコア=ベーシックブームと親和性が高く、需要が高くなっているということだと思う。シンプル=ベーシックというフォーマットは実際面白みがない。なぜなら無印やユニクロでもまかなえてしまうファッションだからだ。事実パリ=オペラのユニクロは盛況しているし、パリジャンやパリジェンヌも今やユニクロをワードローブのベーシックにしている。

パリジェンヌは10着しか服を持たない、という。その10着がユニクロだったとしたら…