get ready(30代男の物欲と服ログ)

都内/三十代男性/既婚/会社員/メンズファッション/アウトドア/音楽/ミニマリズムなど

階層を越境するファッション

世間を騒がせているシュプリームとルイヴィトンのコラボ。ケンドリックラマーとマルーン5のコラボ。ジェイムスブレイクやボンイヴェールやジェイミーxxがオーバーグラウンドに進出し、服も音楽とマイナーとメジャーの境界線が消えつつある。

ユニクロや無印とA.P.Cやマルジェラはもはや区別がつかないのであり、ユニクロはいち早くトレンドを取り入れて安価で服を提供してくれるおかげで中間層であるセレクトショップの意義が薄れつつある。

ノームコアやシンプルファッションが溢れかえり、オーバーサイズが喧伝されると、サイジングやシルエットなど服を選択する上で重要な要素は捨象される。

要するに現代のファッションは何でもあり、なのだ。トムフォードのスーツの下はヒートテックかもしれないし、マルジェラニットの下は無印のデニムかもしれない。そこではブランド物とファストファッションは等価に扱われるのであり、値段以外の差異に優劣はなくなるのだ。

ベーシックなファッションは誰でも似合う。だからこそマルジェラのような4本刺繍のアイコンでベーシックのなかに他との差異を見つける。しかしジルサンダーやプラダになれば最早わかりやすいアイコンすらない。ユニクロとジルサンダーの差異も現代では見つけづらい。高所得者の着るジルサンダーより若者が着るユニクロのほうがクールに映り、最終的にユニクロもジルサンダーやルメールというミニマルファッションの先端部分と蜜月の関係に至った。ジルサンダーの意匠をユニクロは取り入れたことによって階層を越えてジルサンダー的なものは人口に膾炙し、どの階層でも気軽に着れるようになった。

ビッグシルエットの隆盛は購入の際にサイジングを気にする悩みを縮減させ、購買感覚をより拡張させる。ファッションはこのままハイエンドもファストファッションも越境していくのだろうか。おそらくビッグシルエットの発端となったヴェトモン、ゴーシャラブチンスキーのような時代を象徴する服装はユニクロのMA1に置換されるのだろうか。ノームコアの反動で起こりうる装飾過多でキッチュな装い、スニーカーブームで放擲されたセクシーなレースアップシューズ。メディアやファッション雑誌が流行らそうとする流行色や生半可で安売りのファッションに彩られた日本の服飾のなかできらめきを見せるのはどのようなファッションなのだろうか。マルジェラやアンやジルサンダーは本人がデザイナーを退任し、エディスリマンもサンローランを退いてしまった。ファッションの砂漠をさまよう迷える子羊のように当て所なく服を見て着て買ってを繰り返して辿り着くのはどのような場所なのだろう。そんな疑念と期待をよそに毎年秋冬のパリコレを楽しみにしている自分がいる。