ビーチクロスとは、古くからアメリカに存在するウール×コットン素材で、中綿やダウンなど革新的な素材が登場する前の防寒着に使われていた保温性の高い素材です。
この生地を再現するにあたり、ピエールと寺本がプロダクションチームと共に試行錯誤を重ねて完成させました。ウエストが絶妙にシェイプされたエレガントなシルエットに、アナトミカのAの刻印が入るオリジナルのドットボタン。身頃裏にはBEACH CLOTHの素材ネームが入っています。
(アナトミカホームページより引用)
ビーチクロスは1900年にアメリカのマサチューセッツ州で誕生した生地で、ハンティングや野外作業用の防寒着に使用されていました。ウールとコットンの混紡糸をラッセル編み機で編んだ素材で、防寒性が高いのが特徴です。当時はサーファーがビーチで身体を温めるのに身にまとっていたことから、この名が付いたと言われております。
“ごま塩”の愛称で知られるビーチクロスは、その独特の素材感や色合いが幅広い層にウケましたが、1960年代後半に残念ながら消滅してしまいました。
現在販売されているものの大半が、当時のビーチクロスを再現した復刻版なんですが、全盛期のビーチクロス製品についてはヴィンテージマニアの間でも高額で取引されるほど、希少性が高いそうです。
アナトミカの定番の、ビーチクロスベストを購入しました。数年前からずっと欲しかったのですが、先日アナトミカに行った時に再燃してどうしても欲しくなってしまい通称「ゴマ塩」と呼ばれているブラウンベースのもの購入しました。
かつてアメリカにダウンベストが存在しなかった時代にウールで出来たこのベストを着ていた民衆に思いを馳せることで何だか今の自分がタイムスリップしたかのような郷愁を覚えたりします。例えばヘミングウェイの小説やアンドリューワイエスの絵画の老人のような…
何でもないベストなのですが、確かに羽織るとダウンベストよりクラシカルでどこか上品な面持ちになるのが面白いです。
そしてベストはクルーネックよりもハイネックやシャツなど、襟の高い服と相性が良いですね。個人的にはまた今後紹介するアナトミカのモックネックニットや、シャンブレー、デニム、オックスフォードシャツなど、粗野なイメージの服との相性が良いと感じました。
黒のニットも良いし、同系色の、チャコールやグレー、ブラウンも良いでしょう。
個人的にこの上の画像にグッときたんですよね。キャスケットにニットにスカーフ。
柄物のスカーフをこんなふうにサラッと巻いてみたいとも思いました。
基本ベストの裾の下からトップスが覗かないのが望ましいようですね。私は合わすとしたらチノパンやリゾルトのデニムにシャツをタックインして羽織りたいです。
このベスト自体、ダウンまでは届かないけれどそれなりの保温性もあります。4つ付いたポケットは小さくてモノはそこまで入らないけど、ちょっとしたときにスマホとかチケットとかAirPodsとかは入ります。浅いので心配ですけれど。。
こういう時代に左右されないモノは最高ですが、あまりにもタイムレスなものばかり買ってしまって最近のコンテンポラリーなムードを忘れないようにしたいなとも思います。その辺の匙加減はやはりCOMOLIが得意としていると思います。アナトミカはどっちかというとCIOTAに近いクラフトというか、失われた過去の洋服の「アーカイブ」という要素がとても強いと感じます。COMOLIは過去からの復刻ではなく、シルエットやデザインのミニマル化などCOMOLIなりの味付けをしているところが魅力的ですね。
アナトミカはその徹底的なアーカイブ主義が、とても研究者的なスタンスであり、デザイナーの寺本欣二さんのYouTubeもかなり考古学、文献学に近いムードであり、服へのアプローチが興味深いです。現代のフランスやアメリカでもなく、過去そのものの復刻でもない、現代への復刻。
そしてブランドの世界観の構築がとてもうまい。一つで完結するわけでなく、パズルのピースのように複数のアイテムを蒐集する物欲を刺激してきます笑
私もまんまと先日のヘルメットバッグにこのベストをヘビロテしています。このベスト、相当良いのでまたネイビーが欲しいと思っています。
ビーチクロスベスト自体、いろんなところから出ているようです。味気ない地味なスタイリングの良い味付けになってくれると思います。縁の下の力持ち的な働き。