get ready(アラフォー野郎の物欲と服ログ)

神奈川/三十代男性/会社員/メンズファッション/音楽/映画/批評

ソファを決める冒険、完(苦節2年半)

ソファは選びは難しい。かなり難しい。家具の中で一番難しい。

我が家のザ・ラストピース。それがソファだ。暫定的に使用していたカリモク60のKチェアでは小さく感じていた。

おそらくこの2年半、3000脚以上のソファをネットで血眼になって検索した。欲しいソファがない。あったとしても、在庫がない。

ウェグナーのデイベッド? ウチにはデカすぎる。ペリアンやコルビュジエ? 高すぎる。

ジョージネルソンが好きな私はハーマンミラー社のネルソンデイベッドを買おうと心に決めていたが、ここぞという再販のタイミングを見事に逃した。デイベッドの製造は不定期で、次の販売タイミングも未定とのこと。延々とこのまま待ち続けるのも悪くないが、ストレスでもある。

 

思えばソファ以外の家具は、長い時間を掛けて、それなりの費用を捻出し、入手してきた。アナスタシアデスのIC light、グルチッチのクッチーノ、ネルソンベンチ、ネルソンバブルランプ、ネルソンボールクロック、USMハラー、イームズコントラクトテーブル、ブロイヤーのチェスカチェアやイームズDCMなど…おそらくサブマリーナーは余裕で買えるくらいは投資したと思われるが、全く後悔はない。浪費ではないのだ。

洋服と同じか、下手したらそれ以上に部屋はその人を映し出す鏡だ。特にソファ選びは、その人の人格を靴選び並みに表すモノだと認識している。

部屋とは服以上の選択の集積に他ならない。

妻との価値観の擦り合わせもある。幸い我が家は私の趣味をそこまで封じなくても良い、つまりある程度趣味も近いのはありがたい。

 

ネルソンデイベッドに後ろ髪を引かれながら購入に至ったのが、日本の家具メーカー、flat furnitureとbullpenという幡ヶ谷のインテリアショップ別注のデイベッドだ。

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※画像はbullpenさんより拝借しています

 

見た目からグッとくるものがあった。

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オークの温もりと力強さがありつつも、硬いクッションと抜け感のある背もたれの効果もあり、重さを感じさせない軽やかさが同居している。ミッドセンチュリー期のソファがサンプリング元ではあるが、見事にウッドの質感やクッションのバランスがモダンを感じさせる。

そして、どの人物や家の形式をも拒絶しない、ソファとしての寛容さとユーモアを感じたのだ。

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7月にパリに行き、コルビュジエの建築群をめぐるなかで霊感を受けた。今まで好きだったブロイヤー的インダストリアル・クールな質感よりも、それと同居する温もりあるウッドの質感を重視したいと思うようになった。ペリアンやジャンヌレの家具に、なぜあれほどのクリエーターが群がっているのかわかる気がする。そして振り返ればイームズもネルソンも、プライウッドとして「ウッド」を重視していた。

それは無印的な「ほっこり感」と紙一重で、すべてウッドだと野暮ったくなるため、そこにスチールで緊張感やクールな質感を足して均衡を保っている。プルーヴェのデザインを参照したい。

それは野村訓市氏のように、洗いざらしの白Tシャツにシェーヌダンクルを合わせる感覚に近いのだろう。ラフながらもシックでセクシーさを漂わせる巧みさ。

ソファにも厳格さや繊細さ、重厚さ、慎ましさなどあるが、このソファベットは人を、つまりは客人をも受け入れる寛容さを持っている。クッションのファブリックはグレーを選択。グレーは50,000色ある。これにも時間が多少掛かった。

このデイベッド、高知の職人さんが1人で手作りしているという。私が興味を示すと、bullpenの店員さんもすぐに職人さんに連絡してくださり、スケジュールを段取ってくれた。

人の顔やモノ自体との距離感が近い、というのも、モノづくりの温もりを感じられて素敵な買い物だと思う。

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グルチッチのスツールやネルソンベンチなどとの相性ももちろん選定理由にある。

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(我が家のアイドルとグルチッチのスツール)

 

柚木沙弥郎さんのお気に入りのクッションとも相性が良い。幅180センチの「デイベッド」なので、寝転がることも出来る。ソファは別に無くてもいいのではないか、と感じていたが妻がソファに寝そべることが多く、やはり部屋の中でのリラックスの時空はリビングにおいてはソファに他ならないのだろう。もちろんラウンジチェアも今後検討したいと思っている(プルーヴェのアントニーチェア復刻)し、リビングも模様替えによって表情を変えるだろう。

 

まだ届いていないものの、今からワクワクが止まらない。

画竜点睛を欠く我が家のラストピースが嵌った。とりあえず憑き物が取れたような、晴々とした気分でいるし、今後はそのソファを軸に、部屋を組み立てていきたい。

ファッションと同じくらい、部屋作りは楽しくて仕方がない。