get ready(30代男の物欲と服ログ)

都内/三十代男性/既婚/会社員/メンズファッション/アウトドア/音楽/ミニマリズムなど

COMOLIのコットンニットポロ

 

f:id:remontea0710:20240428174958j:image

かつて哲学者のハンナ・アーレントは『人間の条件』という本の中で「公共性」という理想空間について語っています。そこでアーレントが言うには、公共性とは私と他者が「what」=何者ではなく、「who」=誰かとして出会うときに生成されるものだそうです。

whatの空間とは、「何」で埋め尽くされる空間です。私は「日本人」で、「神奈川県に住んで」おり、「AB型」で、「会社員」で…この「」に入るものを「確定記述」と呼ぶことができます。

一方でwhoの空間とは、whatの確定記述の束には還元されない、言葉で語り尽くすことのできない「私」と「あなた」という関係性です。相手が何人で、どういう家庭構成で、何の音楽が好きで、何の車に乗って、何の服を着て、、という空間をとっぱらった、言わば生身のままで相手と「対話」することです。

これが実現すること=自分と相手が匿名の状態で出会うことがアーレントのいう公共性だと僕は解釈しています。「年収三千万円の男と結婚する三つの方法」という男の探し方や出会い方は、アーレントの言う「who」の時空ではありません。しかし時として私はこの二つの時空を反復横跳びしながら往還し、ヌルヌルと揺れ動いていると感じています。

今回はそんな服である、コモリのニットポロをご紹介します。

COMOLIのルックは2月初旬に公開されました。例年通りCOMOLIはルックからリリースまでの距離が短く、そこからじわじわと入荷ラッシュに突入します。このニットポロは4月中旬に発売されましたが、人気商品でもなく燻し銀に位置するアイテムでしょう。それほどまでに「コモリでなくていい」「あえてコモリである必然性がない」と思われる服です。ですが、あえてそこを狙って私はコモリのポロを選択してました。4万弱というのはニットポロでは出しにくく、ジョンスメドレーのそれと大差がないため、王道で行けばスメドレーに軍配があがるでしょう。

しかしコモリのコットンニットはスメドレーとは①シルエットと②生地において絶妙な差異がありました。

シルエットについていえばコモリお得意の身幅広め、肩幅やや広めのリラックスシルエットで決してオーバーサイズすぎない塩梅。

なおかつ生地はコットンですがカスカスのドライな質感なので、湿度多くじっとりする梅雨でも快適そうなんです。

 

コーディネートは潔くこれ一枚で。ルックのように黒で合わせても渋い。

f:id:remontea0710:20240428181935j:image

けど自分にはやや重たすぎるのでパンツはブラックバードのフェードブラックや最近購入したハンドルームのホワイトデニムで合わせたい。

色はフェードブラックなので、すでに一年以上洗いまくって色落ちした「くたびれ感」を醸しています。

f:id:remontea0710:20240428182447j:image

あるいは、こういうスタイリング。

f:id:remontea0710:20240428182052j:image

まだ今の時期は肌寒いので、よくボッテガヴェネタやプラダの店員さんがドレスコードでしているような、白シャツにハイゲージニット、というスタイルの簡易版で、コモリポロにコモリのサマーウールロンTをあわせてみたのですが、これも快適。COMOLIの服はまずもって快適なんですよ。日本の気候や風土に合わせている。

『風土』を記した和辻哲郎や柳宗悦が生きていたらきっとCOMOLIについて熱っぽい文書を寄せていたはずです。

誰からもCOMOLIであることはわからないし、自分自身も着ていたそれが全く気にならない。ブランドで選んでいるのに、逆説的に着ているとそのブランドであることを忘れてしまうかのような感覚。COMOLIでなくてもいいんだけど、COMOLIにしか作ることのできないものづくりの方向性。アレントのいう「what」と「who」を行き来する不思議な存在。

もうかれこれ10年COMOLIを飽きずに買い続けています。今後もそのような存在として自分の基礎的な部分としてCOMOLIの世界観を自分なりに密やかに消化、咀嚼していきたいと思います。