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COMOLIのカシミヤシルクオールインワン

新年初の買い物はCOMOLIにてカシミヤシルクオールインワンを購入した。

初めて地元にできたCOMOLIに行くことができ、初売りだったため忙しそうにされるなか、オーナーにもお会いすることができた。

かれこれ10年以上お世話になっているオーナーの提案で購入したオールインワン。私の趣味嗜好がわかっているため、安心して委ねることが可能だ。オールインワンとはいわゆるツナギだが、今まで買ったことすらなかった。

 


スウェットやシャツ、デニムなどの定番や、最近流行っているというダウンや襟レザー、M65などのアイテムがレコードのA面だとすると、COMOLIの中でもオールインワンはB面に属する服であり、普通に見ていたら素通りしてしまうものであった。

人は他者の欲望に欲望する。人が欲しいものが欲しい。襟レザーの加熱はディオールジョーダン的なスニーカー熱と近く、一方でこのオールインワンは誰も欲望していない。SNS的な浸潤し群れる欲望から離れ、誰も欲望していないものを密かに買うこと。私ももはやCOMOLI11年生なのだ。

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意外や不思議、着てみたらしっくりきた。そのカシミヤシルクのとろけるような質感と、セットアップに見えるような面構えが新鮮で、自分でも驚きがあった。カシミヤ86%、シルク14%なので、暖かく体を包み込んで、まるで毛布のような優しさがありつつ、シルク特有の艶感がある。着ていて楽なのに、決してだらしなさがない。それどころかCOMOLI特有のユニフォーム性が遺憾無く発揮されている。

緊張の中に緩和があり、次第に静かな高揚感が訪れた。本当にCOMOLIの服は着てみないとわからない。吊るしではわからない魔力がある。

定番のベルテッドデニムとジップアップジャケットを同生地で合わせたような雰囲気になるため、言われないとオールインワンだと分からない。

 


「オールインワン」という汚れること前提で作られた作業着が、上質なカシミヤとシルクで再構築される。労働階級と貴族が合わさったかのようなデザインである。本来、オールインワン(つなぎ)とは、泥にまみれ、油に汚れ、汗を流すための「労働の象徴」だが、これほどまでに労働から遠い素材で、それでもなお労働の型をなぞるのがCOMOLIなのだと思う。路上生活者が着ていても違和感なく、なおその服でシャネルのブティックに入ることが出来るような服、それがCOMOLIなんだと思う。


私はサイズ1を購入したが袖や脚の溜まり具合など問題なく着用することができた。その上に羽織るものはレザーでもいいし、ロングコートでも良い。よりカジュアルに寄せるのであれば、コットンナイロンのパーカーなどが良さそうで、それも欲しい。先般購入したCOMOLIの縮絨ジャケットを上に着ると、どこかしらクリエティブな人物像が立ち上がってくる。靴はNB992の黒も良いし、パラブーツもfootworksも当然似合う。汚れたスタンスミスやジャーマントレーナーでスポーツ/ワークに振っても良い。

ririジップで股間からみぞおちまで長いダブルジップになっていて、着脱も容易だ。胸元もジップを開けるとヴァルーズっぽい着方が可能。なので私の好物である白のハイネックをインナーに忍ばせたり、ハイゲージニットを忍ばせたりと遊びが効く。腕まくりをしたり、春先で暑くなったら腰に巻いて着ることもできたり、色んな想像力を掻き立てる服である。

小森さんは述べる。

 


「僕は歴史上にない、どこにもない洋服を作っているつもりです。だけど他人が見てもどこを、何をデザインしているのか解らないと思います。ただ僕の服を着て歩いている姿を見れば、その揺らぎとかフォルムとか、何かしら感じるはずですし、袖を通したら、理屈ではなく身体が感じると思います」

https://www.mocmmxw.com/read/interview-keijiro-comoli-2/

 


COMOLIの服はブランクーシやアンドリューワイエスのような都会から離れた田舎の静謐な空間を思わせつつも、エドワードホッパー的な都市の孤独を描出してさえもいる。先述したとおり緊張感の中に緩和があり、着心地がとにかく良くストレスがない。

幸先の良い買い物が出来た。普段自分では買わない服、しかも挑戦するにしてはそれなりの勇気がいる値段の買い物ではあったが、まだまだ服で興奮したり驚いたりワクワクする買い物はできるのだとしみじみ思った。服にパワーがあるし、COMOLIを着ることでしか得られない悦びが確かに存在する。もうルックもやめてしまったが、それでも良い。新しい服すら作らなくても良いのかもしれない。ブランドが存続すること自体の有り難みと、それを享受できる悦びがある。

この服も長い間掠れてヨレてボロボロになるまで着たい。

とりあえず今年も出来る限りコツコツと買い集めて行きたい。

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(kettleさんより画像借用しました)