get ready(30代男の物欲と服ログ)

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物欲野郎はアイビーリーガーの夢を見るか

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日本のメンズファッションで最も影響力を与えたカルチャーは何かといえば、ロックでもモッズでもパンクでもヒップホップでもなく、アイビーと答えるファッショニスタは多いのではないでしょうか。シップス、ビームス等の出自よりも前にVANがアメリカのアイビーリーガーに憧れ模倣した服を作り始めたのがそのオリジンです。

結果、1950年代にアメリカの大富豪のお坊ちゃんのスタイルとして「栄えた」、というより「アメリカの大学の日常」が「アイビーという現象」として日本人に「発見」され、それ自体を1960年代にVANの石津氏ほか日本人が渡米し、想像し、仕立てたものであるという事象が実に興味深い。

ここでアイビーという現象は「創造(想像)された伝統」として定位されるでしょう。私の故郷・松本市も、昔は無かったのにいきなり「山賊焼き」という唐揚げが持て囃されたりしたのですが、それも「創造された伝統」に他なりません。

つまり60年代はそこまで日本人が規律的に作り上げてきたアイビーリーガーは居なかったということ。では、なぜ「伝統」が求められるのでしょうか? (しかしこの話はまた別の話。いつかの機会に…)

私も「定番アイテム」「伝統アイテム」が大好きですし、日本人はそのような伝統を重んじる傾向がやや強くあるかと思いますが、海外由来の「伝統ではないもの」を日本風にアレンジしてしまうのが非常に上手いのでしょう。

閑話休題。ユーソニアングッズストア(このUsonianという造語すら、他ならぬ「アメリカ的なもの」への憧憬でしょう)に行き、トリーレザーのベルト、WYTHEのキャンプソックス、All American Khakisのチノパンを購入しました。

 

 

TAKE IVYを開き、パラパラページを捲ると出てくる顔も名前も知らない1950年の大学生。74年経った今、彼らは100歳近くになっていることでしょう。現在のところアイビーは下火でありますが、長谷川昭雄氏によるPOPEYEのリニューアル以降、シティボーイでの文脈、あるいは中田慎介氏のアンライクリー的な文脈、そしてキャプテンサンシャインやアプレッセのような「上質な日常」と交差するようなかたちで、アイビースタイルは現代も息吹いています。

私がアイビーにハマる理由はそのTPOでの万能さです。ドレスでもなく、カジュアルでもない。チノパンにシャツやポロシャツ、その上にアンコンジャケットを着る。さらにその上にコートでなくナイロンのマウンテンパーカーやブルゾンを羽織る。足元はシャンボード。そんなスタイルが今の気分です。10年前はニューウェーブやポストパンクに傾倒してエディスリマンのサンローランを履いていたりしたので、10年後はわかりませんが…笑

ちなみに灯台下暗しというか「幸せな青い鳥」というか、5年くらい前から愛用している鎌倉シャツもアイビーシリーズを展開。しかも、アイビー関連書籍の定番本『The IVY look』の著者グレアム・マーシュ氏が監修。真正性が担保されている作りで手堅い本格派。インディビのみなず、こちらも注目したい。てか、ぶっちゃけオックスフォードシャツって違いが分からないから鎌倉シャツもユニクロも買って着比べてみたい。

 

 

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あとケイトスペードの夫、アンディスペード氏にも学ぶものがあるでしょう。スリーピージョーンズのみならず、POPEYEにもよく登場するイメージがありますが、オーセンティックな中に遊び心もある。

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ちなみにUAのビューティーアンドユースはこのアンディスペードをアイコンにしているらしいですよ。知らなかった。

というわけで、無数に散逸しているメンズファッションも、「アイビー」という旗印の元、蝟集することが可能なのです。

あとはフレンチアイビーとか、ブリティッシュトラッドとかいう派生ジャンルも込みで、僕が自分勝手に名付けた「モダンカントリー」はそれらを越境したものとして捉えられます。そして国に拘らず、デイリーユースかつ、実質的、質実剛健なものがまず養成されるでしょう。この点はヘビーデューティーの本が今でも役に立ちます。

 

 

僕は当時のアイビーリーガーと全く同じ格好がしたいとは全く思いません。ですが、それを夢見た石津さんがVANを立ち上げ、日本にアイビーカルチャーをもたらし、それが一過性のブームではなく時代を貫いて現代のメンズファッションのそこかしこに響き渡っている事実は忘れるわけにはいかない。改めて他国文化を独自に解釈して自分のものに落とし込む日本て凄いなと。

「インド人が日本のカレーを食べて美味すぎて驚いた」とか「中国人が日本のラーメン食べて、美味すぎてほっぺたが落ちた」なんていう話もよく聞きます。

この派生において、やはり「ベーシック」、「オーセンティック」としてのアイビーに僕らが学ぶことはたくさんあるのかもしれません。昔POPEYEが「アイビーが僕らの先生だった」と謳い上げたように。

とは言え、ガチガチに固執するのではなく、たとえばUAの栗野さんがそうであるように、ギャルソンをミックスさせたり、僕の大好きなCOMOLIやAURALEEなど時代の空気も取り入れてアイビーを解釈していきたい。その匙加減がファッションの愉悦だと思うのです。