2025年5月26日、日本のヒップホップ界がその胎動を最も顕著に現す場、幕張メッセの巨大な空間は、熱気と期待の渦に巻かれていた。なかでも「POP YOURS」の二日目を彩るヘッドライナーがJJJであるという事実は、幾層もの意味を孕んでいた。若き才気溢れるラッパーたちが競い合うようにステージを躍動するこの祭典において、彼に与えられたその座は、単なる人気や潮流の頂点を示すものではなかった。それは、彼の音楽が持つ深い影響力と、シーン全体に対する彼自身の存在の重みを逆説的に示すものであったし、あくまでも「追悼ライブ」や「メモリアル」なものではなく、「JJJのいつものライブ」がそこに発現していたことを強調したい。
ことに、心待ちにしていたのはDaichi YamamotoとSTUTS、そして他ならぬJJJのパフォーマンスであった。15時に会場に到着した私は、それ以前、YouTubeの画面越しに流れるPUNPEEのステージを凝視した。
そのPUNPEEのステージの中に、そして後にDaichi Yamamotoのパフォーマンスからも、JJJへの限りない愛と敬意が会場の濃密なスモークのように立ち現れるのを確かに感じ取った。それは、単なる先輩後輩の関係を超えた、魂の共鳴が呼び起こす敬意の表明に他ならなかった。
午後7時45分、深い赤色に染め上げられた舞台に、馴染み深いDJのAru-2がビートを鳴らす。「dali 」、この新曲は昨年私も足を運んだ日比谷公会堂（私は『HIKARI』以降おそらくすべてのワンマンに足を運んでいる）で彼が一曲目に披露したドリルだ。その瞬間、空間を支配するはずのJJJの不在が、否応なしに重たいビートと共に意識の奥底へと侵入する。しかし、それは決して「空虚な不在」ではなかった。舞台に投影されるライティングは、あたかも彼がそこに立つべき場所を指し示すかのように、鮮烈な光の軌跡を描き出し、ときに挟み込まれる彼の生の声が織りなすライブ音源は、彼の息吹が未だこの場に宿っていることを雄弁に物語っていた。盟友STUTSとの共作、「心 feat. OMSB」そして「Changes」が響き渡る度に、私の内奥には形容しがたい感情の奔流が押し寄せた。それは、音の粒子一つ一つが、そして会場の一人ひとりがJJJの不在を受け止め、彼の遺した音と言葉を噛み締めているかのようであった。
Benjazzy、Campanella、そしてDaichi Yamamotoといった盟友たちが次々とステージに駆けつけ、それぞれの形でJJJの遺志を受け継ぐかのように、彼のヴァースを歌い継いだ。Benjazzyは、あたかもJJJ自身がそこにいるかのように、そのパートを完璧にカバーし、Daichi Yamamotoもまた、自身のライブで披露した「Taxi」を通して、JJJの魂を自らの声に乗せて歌い上げた。それらの光景は、単なるカバーパフォーマンスを超え、彼の音楽が今後も仲間へと託され、受け継がれるべきものであり、その曲群の強度、そして生命力を、改めて世に知らしめるものであった。
彼らがJJJの不在を経て、その遺した音楽とマインドを次世代へと託していく様は、ライブではありながら、次第に、まるで一つの荘厳な儀式の様相を呈していた。私は、かつて経験したことのない、不在を伴いながらも、その不在が逆説的に強烈な存在感を際立たせるという、奇妙なまでのライブ空間に包まれていた。もちろん、個人的な感傷が心の奥底で渦巻いていたことは否定できない。しかし、この計り知れない感情を、一万人ものヘッズたちと共有できたという事実、その集団的な経験こそが、彼への最も盛大な見送りであり、私が探し求めていた「落としどころ」を見つけた瞬間でもあった。
6月19日には、彼が当初予定していたワンマンライブが控えている。昨日、幕張の地に彼の魂が確かに宿っていたように、来たるワンマンライブにおいても、彼は確かにそこにいるだろう。それは、音楽が、そして魂が、身体を超えて存在する証しなのだから。川崎に住む私はkid returnを爆音で耳にぶち込んで、maktubのTシャツを纏いながら帰路に着いた。強く生きていきたい。
JJJ POPYOURS2025 セットリスト
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dali
Kids Return
BABE
心 feat.OMSB
STRAND
Eye Splice
Something feat.Campanella
Find A Way/Daichi Yamamoto & JJJ
Cyberpunk feat.Benjazzy
Maktub
Oneluv
Beautiful Mind
Changes feat.JJJ/STUTS
Fla$hBackS/Fla$hBackS
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