巷でも溢れかえっている企画ではあるが、便乗したい。
5位COMOLIのコットンダックジャケット
あなたがもし休日に気楽に羽織れるジャケットを探しているのだとしたら、このコットンダックジャケットは一つの選択肢になるかもしれない。
今年4月に春夏用のジャケットとして購入したが、秋口や冬のインナーにも着れる。このダック生地が、カーハート的な厚みがあるものでなく、むしろオックスフォードシャツに近いくらいの軽い生地で、重さがない。何回か洗濯したら少しフェードがかってきて、Tシャツに合わせるにも良い。これにdrake'sのコットンウールのバンダナスカーフを巻くスタイルをよくやっていた。加えて、インナーにシャツを合わせるときはやはりコモリシャツがハマる。シャツに関してはオックスフォードのボタンダウンシャツが自分には似合わない、という発見をした年でもあった。個人的アイビーブームはすぐに終わりを迎えてしまったが、自分の好きなスタイルが逆照射的に浮き彫りになった。
このコットンジャケットはいわゆる意識高い系のスタートアップ若社長が白ティーにコレしか着ないみたいな似非ミニマリスト的な狭隘な服装哲学には与しない、余白のあるジャケットだ。そういうジャケットよりも、やれていて、粗野で、くたびれている。私はなんとなく「ブランクーシが着ていそうだから」という理由で購入した。選ぶ服にも、適当で良いから自分の好きなカルチャーやテーマと紐付けることは、意外と重要だと考えている。
4位RIERのチロリアンベスト
世の中には2種類の人間がいる。
ベストを着る人間と、ベストを着ない人間だ。
ベストの魅力は服好きな友人が教えてくれたが、たちまち私もその虜になった。が、合う合わないはある。パタゴニア的なアウターベストではなく、私はインナーに差し込む形のベストが好きなのだ、ということが、ベスト着用経験値を積み重ねていくうちに学習してきた。人間は失敗から学ぶ生き物だ。
アナトミカのBBベストの汎用性が素晴らしく、同じような短丈のベストを探していたときに見つけたのがリアだ。
リア(RIER)はフランスを拠点とするファッションブランド。デザイナーはアルプス東部、オーストリアとイタリアの間にある南チロル地方出身のアンドレアス・ステイナー。
ブランドのコンセプトは「TYROLEAN PUNK(チロリアンパンク)」。このチロリアンはチロルの伝統、パンクは既成概念へのリアクションを意味している。
リアのデザインには、アンドレアスが育った南チロルの伝統、工芸、自然、ライフスタイルや美学が反映されている。南チロルの特性をベースに、現代の都市的ライフスタイルを取り入れたものを得意としている。
アナトミカのBBベストは、まだダウンベストが登場する前の労働者が羽織っているものを復刻しており、そのストーリーにも唸るものがあったが、登山愛好家としては、リアがアルプスのチロルで誕生しているというストーリーにグッと来た。そしてパンクと来たものだ。あまり交わらない二つの事象が交差することは、私の大好物だ。ブランドの志向性も親しみを覚える。
実際にベストを羽織ってみると、ウールの生地が厚く、パイピングも丁寧で高級感がある。ソリッドな中にも控えめな花柄が、私の無機的なスタイルに柄の通り華を添えてくれる。合わせるのは無地のハイゲージタートル。少し寒い時はその上にジャケットやブルゾンを羽織る。シャツの上でもいいし、短丈なのでバランスがとりやすい。ユニセックスなので妻とも併用可能だ。これを来てチロリアンパンクを気取っている。チロリアンパンクが何か分からないが、おそらく靴はパラブーツで間違っていないだろう。RIERはLEMAIREに近いが、よりソリッドなイメージがある。サロモンともコラボしているため、oamcやJIL SANDER、J.L-A.Lなどに近いかもしれない。今後も注目のブランドだ。
3位アナトミカ×drake'sのストール
思うに、「無地のアイテムに小物で華を添える」ことにフォーカスした一年だった。ドレイクスは「アメトラ、アイビーに対するUKからの返答」のようなブランドイメージがあり、アメトラ特有の野暮ったさはあまりないが、バブアーやラベンハム的UKのラギッドさを感じる、とても好きなブランド。この動物柄はドレイクス自体のアイコニックなシグネチャーモデルであり、アナトミカのピエール氏も愛用しているらしい。私はボルドーを選択したが、ネイビー、グリーンなど様々な色で展開されている。ストールは無くても良いが、首元に華を添えてくれる。もしあなたがジャケットを着る時に丸首のニットを着ただけで首元がなんだか寂しくなったとき、あるいはバブアーのブルゾンにフィッシャーマンニットを合わせたが、寂しくなったとき、このストールを無造作に巻いてみてはいかがだろうか。上品さと少しの遊び心を加えてくれ、単なるベーシック一辺倒から少しラグジュアルな装いにチューニングすることができる。
2位トゥモローランドのタートルネックハイゲージ
あなたがもしハイゲージの黒のタートルネックを着ていたら、少し寒い朝にチュイルリー公園を散歩したあとに、左岸のボザール近辺のブラッスリー「ラ パレット La Palette」に入ってエスプレッソを楽しむことは容易だろう。そんなようなことを12年ほど前にしていた気がするが、残念ながら質のいいタートルネックを当時私は着ていなかった。オルセー美術館の前で品のない騙し屋を追い払っていたくらいだ。その近く、セーヌ川沿いにはドリスがあった気がする。いつかまた、パリに長期滞在してみたい。
令和ロマンの高比良くるま氏がM-1にて「終わらせましょう」というパンチラインを残し、それが後続の漫才師にまで影響を与えていた時点で、今年のM-1は令和ロマンがM-1の空間を掌握していた。
私のハイネックカットソーおよびハイゲージニット探求はまだ続いていたが、ようやく終わりが見えてきたかもしれない、と実感したのがこのトゥモローランドだ。
シルエットも細すぎず、目が細かい。ネック部分は手縫いしているようで、ネック部分にとにかくストレスがない。首が締め付けられる感覚もなく、緩くなる感覚もない(ダラッとしてしまうハイネックは苦手なのだ)私の敬愛するXのアカウント「服装哲学bot」も述べている。
「かなりのお金をかけて買っておいても、いつだって、絶対に失望することのない服。こんな服が、自分にとってどのくらい大事か。」
「黒いTシャツやタートルネックに黒いパンツ。公園のジョギングから最高級のレストランまで、どこへでも行けます。」
少なくともこのタートルネックに関しては失望することがなさそうだ。もうこれ以上、タートルネックに悩むことを終わらせましょう。こういうシンプルで上質なニットを本気で、しかも継続的に作っているブランドは少ない。ニットから始まったトゥモローランドという会社のニットには、当然信頼を置いてもよさそうだ。私は黒とチャコールを購入。
1位COMOLIのポストワークパンツ
買った後に知ったのだが、デザイナーはこのパンツについて 「色々なアイテムを経験した方達が行き着くパンツの一つであってほしい」とコメントしている。私も色々なパンツを穿いてきた。ラッドミュージシャン、April77、クリスヴァンアッシュ、サリバン、アクネ、ナンバーナイン、プレッジ、アンダーカバー、アーペーセー、サンローランなどの足が割り箸みたいに見える細身パンツ。それらはどれもコットンのパンツだった。アラフォーおじさんは生地で差を付けたい。このCOMOLIのパンツは型自体は以前から展開されていたが、ウールサージとウールフラノは初めてだったと思う。試着したところ、私のお気に入りのコモリのコーデュロイパンツとはまた違う、腿幅から裾幅に掛けて綺麗に落ちるシルエットで、このパンツの虜になってしまった。太すぎず、細すぎない。普通なんだけど、なんだかシルエットが綺麗なのだ。ポストワーク、ということで郵便局員の作業着から着想を得ているのだろうか。コモリの魅力のひとつは、このような上質なユニフォーム感だ。デニムやチノやベイカーよりも上品だけど、スラックスよりもカジュアルダウンしている。パラブーツにももちろん合う。労働着やユニフォーム、と呼ばれるものに私は滅法弱い。結局そういうものがワードローブに残っている。
そして、上述したタートルネックニットとリアのベストを羽織って、スカーフを巻いたら私のスタイルの完成だ。
今年は色々とトライもしたが、逆に自分の好きなスタイル=上質で情報量の少ないドレス+少しのラギッドさが分かった年でもあった。Xの服装哲学botにも12年の時を経て改めて学ばされている。いつもアイコンのサンローラン氏が話しているかのようで、襟が正される。いつになってもスタンダードやベーシックは廃れないし、これらの言葉をコンパスとしたい。
あの頃の自分とまた向き合って、一時の流行にも気を配りつつ、上質なベーシックアイテムを集めることに専念したい、と今は思っている。
このブログも気づけば9年。本当に読んでくださる方には感謝しかない。
今後の目標。この9年間のブログを踏まえアイテムを厳選し、「私のユニフォーム」とか「私の服装哲学」みたいなZINEを作ってみたいと思う。そのためには物撮りのテクニックだったりを学ぶ必要があるな、などと色々思索しているけれど、やはりフィジカルとして、紙媒体でもデジタル媒体でも構わない。このブログの一つの目標として、自分の成果物があると良いと感じている。果たして上手くいくかはわからないが、自分の好きなものは自信を持ってお伝えしてきた自負はある。
というわけで、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
番外編
あと、アートとかデザインとか建築書を結構買った。私にとって服装ーファッションとカルチャーは分かちがたく結びついているから。
アート関連の本はどうせ流通し終わったら絶版になるのだから、早く買うに越したことはない。東京でもアート書籍を買えるようなところは限られていて、大きいところだと代官山蔦屋があるけれど、そこまで頻繁に行くこともなく。やはりAmazonで買ってしまう。買ってよかった代表をあげたい。
武田鉄平さんのこの書籍の個展にも行ったが、非常に素晴らしかった。リヒター的な超現実ながら、「描くことを描く」というメタ的視点をもとに描くこと自体が新鮮に映った。
ペリアンについてはまだ学んでいる最中ではあるが、その作品群を一覧できる。装丁も非常に好みな一冊だ。
コルビュジエの脳内都市を現実化したチャンディーガルの都市計画の現地視察ルポ。ジャンヌレの家具もここから始まった。いつか行ってみたい場所のひとつ。
Radioheadのベーシスト、コリングリーンウッドが撮り溜めたレディオヘッドのポートレイト。レディオヘッドのファッションは特にトムヨークがマルジェラやアンダーカバーを好んで着たりと注目されがちだが、個人的にはエドのUKっぽい服装が好みだ。
こういう本も10年も経つと手に入らなくなっていることがあるので、早めに買っておいた。
ジャッドの本は、どれも装丁が素晴らしく、集めたくなる。私は真ん中の黒い装丁のものを購入した。