谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を持ち出すまでもなく、室内の照明が齎らす光と陰の効果は重要です。今まではシーリングライトでリビングとダイニングを照らしていましたが、ようやく私もペンダントライトを購入しました。インテリアの勉強というか物欲探索をしているうちに、「部屋を明るく、満遍なく照らす」ことは陰影をなくし、全てを均質的に明るみに晒してしまうので、部屋の立体感や奥行きが出にくくなるというセオリーがあります。私は今までテンポラリーな形でコンパクトシーリングを使っていましたが、長い間のシーリング生活を経て、ペンダントライフがスタートしたのでした。
ペンダントライトの候補はいくつかありました。まずは家具インテリアに目覚めたら通らざるを得ない、ルイスポールセンのPH5です。均質的かつ無機的なのっぺりした空間であればあるほど、そのデザイン性が部屋に良いアクセントを加えてくれます。
次の候補はartek社から出ているアルヴァ・アアルトがデザインしたビーハイブ。「蜂の巣」と言われるだけあって、スチールとパンチングのメッキ部分から漏れる照明が特徴的。こちらもデザイン感はありますが、アアルトの自邸でも使われているそうです。こちらも候補ではあったのですが、今回は外しました。ですがいつか家に取り入れたい照明の一つであることは間違いありません。
この二つの候補も北欧の名作=クラシックなのですが、私が選んだのはハーマンミラー社から販売されているジョージ・ネルソン作の「バブルランプ」です。
ネルソンのバブルランプは何種類もデザインがありますが、ミッドセンチュリーと呼ばれる20世紀半ばに西欧で発現したプロダクトデザインムーブメントの名作と呼ばれています。
同時期に活躍していたIsamu Noguchiの「AKARI」も名作中の名作でありますが、それよりもよりインダストリアルな面持ちなのと、鈍い光沢のあるテクスチャーが気に入りました。そのテクスチャーは、骨組みであるスチールを回転させ、特殊なプラスチックをスプレーで噴霧し、今でも職人が手作りで作っているようです。
MoMAの永久コレクションにも選定されており、1952年にデザインされましたが、70年後の現代でも古びるどころか全く新しいものとして取り入れることができると思います。
届いてから早速ダイニングに吊るしてみたのですが、60WのLEDを入れて点灯すると、そのプラスチックの膜を通過した柔らかく温かみのある光がダイニングを優しく照らしてくれ、それまでの100WのLEDシーリングとは比べものにならぬほど部屋がムーディーになりました。
これほどまでに照明の効果というのは大きいのか、と。そしてバブルランプ、どこかスペーシーでUFOを思わせるようなSFチックなデザインですが、照らすととても和のムードもあるところが日本の家にも合う気がしました。
あとペンダントライトの良いところは、消灯している時にもそれ自体のデザインが部屋のインテリアの良いスパイスとして機能してくれることでしょう。シーリングだとなかなかそうは行きません。
今回のバブルランプはあくまでダイニングを照らすものではありますが、光を部屋の各所に点在させ、「光のたまり」を暗がりに作ってあげることで、リビングは今まで以上に奥行きと深みが出ました。
まだインテリア入門をしたばかりなのですが、これで一気に照明沼にハマってしまっい、この後スタンドランプ、テーブルランプを買うことになるのでした...笑